宮本輝 灯台からの響き

撮影日:2020年9月15日 (火)

新刊として出たばかり(令和二年九月)で、様々な人の紹介記事や書評に目を通していると、図書館で借りるのを待つには時間が長すぎるし、文庫はいつになるか未定だろうから、思い切って買ってきました

装画も綺麗なので千九百円という値段ですが、文庫になっても千円ほどにはなるだろうし、今読むのが一番よかろうと考えた

六十二歳に主人公が奥さんに先立たれるところから始まるんです

読み始める前には知らなかったこの年齢に何かの偶然を感じながら、この人生を振り返りながら姿に、宮本輝がこれまでに書いてきた小説のなかを貫いている人の生き方や様々な出来事との物語が次々と蘇る

それは多かれ少なかれ誰もが還暦という年齢を迎え、それを越してなお人生を振り返る続けるときに、必ず立ち止まって考える大きな重いテーマのようなものが人生には存在するのだと思い至ることを、さらりと物語にしている

人によっては重苦しく説教じみて書かれているように感じられるだろうし、現代風のテレビドラマのようにちょっとトレンディな味わいを噛み締めながら読む人もあろう

訳あって灯台を訪ねる旅をしながら、物語の動機を生む出来事に迫ってゆくのだが、昔の宮本輝の小説よりは、重みも辛さも消えていて、優しくさらっと大事なところは流してしまいながら、きちんと物語に仕立て上げている

新聞連載ということもあろうが、難しい説教のような言葉も会話も特には目立たず終わってしまったのは、物足りなさを残したかもしれない

しかし、人にはいろんな生き方があって、思わぬ出来事やトラブルが起こって、ひとつひとつ言葉にはしないけれども人と人とのつながりの中にさりげなく潜んでいるようなハッとすることも、これほどまでに物語のシーンの中に巧みに盛り込まれると、小説でありながらドラマのような錯覚に満たされる

作品の流れの中に大きな事件や推理を要するようなものはないのだが、適度に高ぶる気持ちを抑えて読み進める作品であった

一気に読むのは勿体無いので、わざとゆっくりと読んだのだが、せっかちな人には少し物語としてシンプルだったかもしれない

灯台というものには私は子供の頃から馴染みがあるので、それなりに身近な灯台を想像しながら風景なども思い浮かべていけたが、海や灯台が身近にない人にとったら、旅に出る衝動も受けたのではなかろうか