鶴さん そのつづき(4)*
8月10日 札幌から積丹半島へ
何をどう思ったのか積丹半島に向かう
今となっては、理由や当時の気持ちは思い出せない
秘境的イメージを地図から感じ取っていたのかもしれない
汽車が行き止まりであったからかもしれない
綺麗そうな海を想像したのか
灯台のある静かな漁村を瞼に絵描いたのか
行けるところまで行ってみようと考えたのだろう
このころは野宿をする発想もなければ技も道具もない
駅で寝るなども考えない
どうにかなるさ…的な呑気さもない
冒険心のようなものはあったとしても
勇気はない
根拠も
自信もない
そんな頼りない奴がよく一人旅をやれるものだ
この時代がのんびりしていたのだ
人々がゆっくり生きている
安全で信頼できる人たちがあふれている
みんなが支え合っていたのだろう
みんながお隣をお節介ではない目で眺めていたのだろう
バスで行き止まりまでいった
この道の向こうには何があるのだろう
どんな景色があるのだろう
ただそれだけだった
半島で写真を撮ってもらって
帰って来て北海道中央バスのバス停の売店でくつろいだ
バイトの女の子と話した
メガネをかけた可愛い子だった
それが鶴さんとの出会いだった
帰りのバスが行ってしまっても話がしたかった
そんな衝動はこれまでにはなかったのだ
バスが行きますよと言われて
ヒッチハイクという手を思いついた
人生があの時に変わった
ひとつの選択が違っていたら
全く違った人生であっただろう
8月13日 改訂・追記
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