1人ぽっちになった今、磯辺は生活と人生とが根本的に違うことがやっとわかってきた。そして自分には生活のために交わった他人は多かったが、人生のなかで本当にふれあった人間はたった2人 母親と妻しかいなかったことを認めざるをえなかった。「お前」と彼はふたたび河に呼びかけた。「どこ行った」河は彼の叫びを受けとめたまま黙々と流れていく。だがその銀色の沈黙には、ある力があった。河は今日まであまたの人間の死を包みながら、それを次の世に運んだように 川原の岩に腰かけた男の人生の声も運んでいった。
きのう
遠藤周作
深い河
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