こぼれ話 2 さぬきうどん ー 花も嵐もⅡ その61
■ さぬきうどん
不思議なもので、うどんであるとか蕎麦というものは旅人を惹きつける。どうしてなのだろうか。
味が脳みそにストレートに響くのだろう、という気がしている。理屈もなく旨ければ身体中が悦ぶのがわかる。
うどんに出会ったのは、偶然だった。
あるとき、宿のあてもなく、飛び込みで琴平YHに泊まることした。夜も遅く、夕飯が出来る時刻ではなかったこともあり食堂を探して町の中を彷徨った。そのときに1軒のうどん屋に入ったのが始まりだった。
店は、決して綺麗でもなく新しくもなかった。ファッショナブルなグルメブックにも無縁のような店で、そこに無愛想な爺さんいた。しかし、その爺さんが出してくれたうどんが格別に旨かった。
「この蒲鉾は坊っちゃんでも出てくる八幡浜の蒲鉾だ……」
みたいなことをボソボソと言いながらカウンターの向こうで調理をする粋な爺さんで、「さぬきうどん」って何だろう、どんな味がするのだろう、と私は不安だったが、食べて見て驚いた。
この旨さはどこから来るのだろうと、メラメラともっと食べ歩いてみたいという自然の欲望が燃え始めたのです。
(しょーもないグルメブームの煽りではなく、自分のセンサーが働いたのが、この上ない誇りだと思っている)
■
後にも、さぬきにはうどんを食べるために、四国に何度も立ち寄ることになります。
旅のステータスとしての食の満足は、旅の満足にまでなります。
私の人生にも大きな歴史を残してゆくことになります。
何度も何度も、四国を訪ねて旅した時期は、幸せな時代でした。
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