本気でもないのに ー 恋
じゃんけんで負けて螢に生まれたの
蛇苺いつも葉っぱを見忘れる
池田澄子
「負ける」「見忘れる」というふだんの私の弱みを握ったような言葉が俳句には欠かせないのではないかと、時々そう思う。
弱音を吐いたり、言い訳をしたり、静かに考えて自分にいいように納得してみたりして、わたし自身に何かを言い聞かせてここまで生きてきている。
930 本気でもないのに恋を占って途中で飽きる牡丹のはなびら 砂女
「本気でもないのに」というところが私好みで、俳句(で遊ぶ)人を泣かせてくれる。
泣かせるものはもちろん他にも数多いのだが、5弁の花びらを可憐に咲かせる初夏の花はも数多いものの、六つの花びらをさも安定させているかのように見せてくれる花は珍しく、他にも名前が浮かんでこなかった。
占いというのは、もう誰にも何にも縋れないときに初めて全身全霊で便りかかるものである。そんなことがあるとすれば生きている間にあと1回だけあるかないか。
「本気でもない恋」 この先何度 落ちるのだろう
そんなことを考えていた。
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