あの夜は垂氷の道を手をひかれ 砂女
言葉は自由に旅をすることができる。
垂氷などもう30年以上もじっと見つめたことなどないのだが、子どもの頃、近所のどこぞで悪さをして遊んでいるときに、氷であるとか霜柱であるとかを見つけたときの感動を思い出す。
そんな出来事があの夜に起こっていたのだろう。あの夜とは計り知れぬほどに悲しいものなのか、逃げようもなく恐ろしいものであったのか。母の手を引かれ、どこかに逃げる夜道であったのかもしれない。
そんなドラマさえ今どきの人には想像もできず面白みもない物語にしかならないのに、冷たく吹きすさぶ風が滴る鼻水をも凍らせるほどの夜に、大きな瞳だけがギラギラと輝き暗い夜道を見つめている。
目が光っているのだ。その眼差しが浮かんでくる。
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