ヒソヒソとあなたの好きなウイスキー 6月下旬篇つぶやき
あっという間に過ぎ去った6月下旬。
そして今年も半分が終わったのだ。
夏はこれから。
6月17日
▼くちなしと聞いて昔をたぐり寄せ
子どものころに近所の軒垣に咲いていた。
地味な花なのだけど、花びらが苦そうで嫌だったな。
▼届かない。琥珀のグラスを見つめても
私は機嫌が良いときにしか晩酌をしない。
だから、グラスにお酒が注がれてあるということはゴキゲンなわけだ。
自分と対話をしている。
▼ねえ僕は紫色が嫌いなの。知ってるくせに
そうだ。アジサイが咲き始めたのだ。
素敵な花なのだけど、短い寿命が気の毒で。
だから、ムラサキをあまり好まないのかも知れない。
6月19日
▼父の日や普通に1杯酒を飲む
▼父の日や部屋で形見の絵を睨む
▼父の日に鬼の顔して我を見る
父の日に、三句いじって、黙り込む。
どうでもいいんだ。父の日なんてのは。
6月22日
▼夏至の朝子ツバメ大きく口を開け
いつ飛び立つのだろうか。
緑の田んぼの上を悠々と、ときには、街の中をいそいそと。
巣を見上げる私を遠くから親ツバメが伺っている。
6月23日
▼タチアオイ乱れた恋を見届けし
-- なあ母さんや、あの花なんていうの?
-- アオイやな。
母にはなぜのその花の名前を聞いたのか、言わないままだ。
6月27日
▼浴衣きて無限の魔力のヒトとなる
不思議な、魔法のような風が吹いてくる。
肩を並べて歩くその人に、ストレートに気持ちを投げている自分がいる。
6月28日
▼近寄って髪型変えたと聞いている
▼メルアドを変えて、髪型変えたかな
知らない振りしても
ちゃんと知ってるんだ。
もしかして少しは気にかけてくれているの…なんて、思っちゃいけないの。
6月29日
▼髪の毛で思われニキビを隠すクセ
NHKのつぶや句575に投句した作品。
結構気に入ったんだけど。ボツ。
▼オケラ鳴く母に逢いたし我も泣く
▼君なんか暑さに溶けてしまえばいい
強がってみたいこともあれば
自分って弱いなと思うこともある。
夕焼けが真っ赤だったりすると、思い出したくない人も思い出してしまって、心は反対のことを思っている。
6月30日
▼ほんとうは好きなんだけど目をそらし
▼水割りの琥珀が好きで一目惚れ
▼ヒソヒソとあなたの好きなウイスキー
ウイスキーがない生活スタイルは私には無い。
もしかしたら
無意識の中に、思い出が解けているのかもしれない。
琥珀色そのものは好きな色じゃないのに、酔いを誘うときは例外だ。
未完成の恋があるのかも知れない。
6月が終わってゆく。
どばっとごみを出しておく。
▼まどろみの朝に隣家で時計なる
▼片想い、数えられないほどの人
▼異常なの?地球がため息ついただけ?
▼恋をした?アツクなってる地球さん
▼窓開けて熱風襲いかかりくる
▼釣竿や放置されたる夏の川
▼アイス食べて夕立雲の来るを待つ
▼雷雲はそちらにゆっくり行きました
▼好きだよと言えば爆発する二人
▼暗闇に仄かな明かり届けたい
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