こぶしの花が咲いたら、古い地図は棄てて、新しい街へと旅に出よう
こぶしの花が咲いたら、古い地図は棄てて、新しい街へと旅に出よう
私たちの出会いは、偶然で
そう、
別れは必然だった。
桜が散り果てて、薫風が疎水をそよぐ季節に
都大路のセンターラインの向こう側にいたあの人と
信号待ちをして止まった私との視線が
合ったというだけの事件であればよかったのに。
枝垂れ柳のもとでは激情の恋は語れない。
こぶしの花咲く街道を、
確かめ合わない感情をみちづれに
旅を何度も繰り返し、
何度も何度も、土砂降りの雨の中でさようならを交わしておきながら
最後は、晴れ渡った青空の下で
さようならも言えずに、散り散りになってしまった。
― ねえ、偶然というものは、これほどまでに罪深いものなのかい。
― いいえ、あなたが嘘つきで、いつまでたっても私を迎えに来なかった罪を、偶然のせいにしないで。
雪がとけて、こぶしの花が咲いたら、
古い地図は棄てて、新しい街へと旅に出よう。
| 2009-04-04 23:20 | 深夜の自画像(詩篇) |
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