秋彼岸すぎゆく九月を振り返る ─つぶやく十七音〔彼岸篇〕
▼秋彼岸すぎゆく九月を振り返る
すっかり涼しくなってくれて嬉しい。
道で誰かに逢えば、まず「涼しいですね」と挨拶を交わす。
そんな落ち着いた秋という季節が好きなんだろう。
どの季節を嫌うわけでもなく、特別に好むわけでもない。
みんな大好きだ。
過ぎる。
時間は過ぎる。
それを川の流れに例えて風流を愉しんでみたり、儚さを嘆いてみたりしている。
先日も友人の身内が亡くなって、身に詰まされる話なだけに、そのことで便りさえ書けない。
本当に考え込めば安易にペンなど持てないのだなと、思う。
(24日)─金
仕事の帰りに本屋をふらつく。
駅ビルの本屋で吉野弘の詩集を見つけた。
ただそのことだけで嬉しい。
買ったのは、向田邦子「男どき女どき」
▼久々の駅待合せ白墨の、伝言板今はなくなり
(23日)─木
墓参り。
雨がザザザと降って、雷がごろごろ鳴って
パタリと止んだその合間に、行く。
▼秋彼岸庭の片隅に赤ひとつ
まだ咲いていない、遅いなあ今年は、と嘆いていたのだが、赤い花を見つけてホッとする。
苦々しい花だが、赤は好きだ。
短い命やな、この花も。
(回想)
▼彼岸花咲いたと父に手紙書き─2005年9月17日(土)
このときには既にもう逝って、居なかったのだが、秋には似たことを連想している。
▼明かりなき奥座敷まで照らす満月─2005年9月18日(日)
(22日)─水
虫が鳴かない。
そう嘆いていたら、急に秋めく。
▼秋の虫ひとまとまりに仏前へ
▼名月や思われニキビに指がゆく
別にニキビが出来たわけではないのだが、月を見上げると喋れなくなるから、暇になった手が顎にゆくだけだろう。
雲が流れている夜だった。
「名月や思い思われ振り振られ」
と昨日の夜に書きなぐっておいて、やっぱし月は綺麗やなと、家路を急ぎながら見上げる。
「月はひとり、星は二人で見上げたい」
とノートに残してから早くも一年が過ぎる。
切ない日々であった
▼名月や思い思われ振り振られ
月はイジワルだ。
(20日)─月
彼岸花まだ咲かない。
去年の日記には19日と書き留めてある。
明日の朝、咲いてるかどうか。
昨日、白ワインと「麦とホップ」(愛飲)を交互に飲んだら美味かった
娘の寮で泊まって、ワインを飲んで、寝転んで部屋から月を見上げている間に眠ってしまった。
(19日)─日
月が少しずつ丸くなる夜に
静かなドラマを思い浮かべている。
▼秋鯖をしめてゆったり日暮れ待つ
▼来客は月に惑いて遅れたり
▼彼岸旅里の障子に孔ひとつ
▼キリギリス襖隔てて誰を呼ぶ
そういえば、障子の間が少なくなったね。
実家に泊まることも少なくなったし。
(16日)─木
どうも、雨を見ると昔の切なさが甦ってきて、憎くもない過去を憎んでいるように書いてみたくなる。
そういうストーリー(小説やドラマ)がとりわけ好きなわけでもないのだが。
▼秋雨や失くした恨み語る恋
▼秋刀魚こうて秋刀魚の小言も聞いてやる
▼土砂降りに濡れて来ぬかと軒で待つ
▼雨降りを恨む素振りで傘の下
(15日)─水
あの人はまあるい顔でいつもニコニコ
▼お月見のだんご丸めてキミ恋し
▼じゃんけんポン!あいこでショ!っと抱きしめる
おなじみ。
こんなことばっかし、言っている。
そんなふうに やってみたい。 きみ。
(14日)─火
8時ころに職場に向かう坂道を昇る。
日光が直撃するのでとても暑い。
▼秋の朝靴音聞いて振り返る
▼電話して、インクが乾くその前に
▼好きですと書いては消してまた書いて
▼遮断機を一緒に渡った遠い日の夕暮れ
暑いくせに、そんなことを考えながら歩いてくる。
これを手帳に書きとめて、仕事モードになってゆく。
◎A子さんの話、続き。
あなたってグルメじゃなくメンクイでもないから、旦那さんになる人は楽ですね、と尋ねたら、優しくしてもらってるだけで嬉しいです、と言っている。
何でこんなにかわいい子に彼氏がいないのか。
やっぱしお見合いパーティ主宰してやるしかないか。
▼夕暮にちょっとセンチになってみる
こんなことを書いた日はきっと、夕暮れの空を見ながら歩いて家路を来たのだろう。
汗もかかない季節になっている。
▼ポケットから甘いミカンをくれた君
スーパーに並んだ青いミカン。
あれはカワイイねえ。
▼月明かり飲んで語って沈み込む
風呂あがりに、外に出てみると月が高くあがっていたのだろう。
語りたくなる季節なのかも知れない。
▼ゴキブリと秋の夜長ににらみ合う
そう、寝床へ行こうと階段を昇っていたらじっと柱の蔭におりました。
にらみ合いをして、私は立ち去りましたが、私の後から来た妻が悲鳴を上げていました。
格闘をしていた模様ですが、私はそのころは眠り始めていました。
(11日)─土
今年最後の休日出勤当番日。
ちょっとボーっとしてみたり。
当番の日に何も起こらないことは平和な印だ。
▼缶蹴りの缶を蹴って夕やけ
▼いわし雲、恋した人は魚好き
▼道端の石に腰かけ橘寺へ
▼彼岸花咲く前、明日香に旅に出る
(10日)─金
▼夜更かしをしてみたくなる、夜長かな
▼夜が秋らしくなってきて、酒美味し
▼鈴虫の鳴き方下手で秋あさし
▼ふと粒の葡萄齧るや秋の雲
▼一房の葡萄つまんで夏おもう
今年は猛暑日が歴史的にも多かったそうで、9月中旬を迎えるのにまだまだ暑い。
しかし、秋の気配は十分に漂っていて、それが混ぜ足りない炊き込みご飯の斑模様のようになっているのかもしれない。
秋を歓び、夏を惜しむ。
(9日)─木
▼あらし去り白露がきゅんとすまし顔
台風が沖縄から九州の北部を回って、日本海を通って本州を横切っていった。
少し風が吹いて、上空も綺麗になったのかな。
(8日)─水
日本列島の西部に台風が来ている。
みなさん、おはようございます。
静かな雨です。
(3日)─金
▼間違えて巨乳と呼んだ巨峰かな
私はオッパイフェチでもなんでもないが、巨乳という響きは好きだ。
何べんもよう言わんけど。
(2日)─木
雨降り。
おはようございます。
雨降って涼しい。
うれしい
そう、メモ書きしている。
▼赤まんま嵐山けぶる雨のなか
(1日)─水
▼おやすみと今夜は言わせてあなたへの
▼ねえ九月雨の哀しい思い出ばかり
▼あなたは朝寝坊だと言うけれど、ほんとうはもう起きてボクと同じ朝日を見ているのかもしれない
朝日を見ても
夕日を見ても
風が吹いても
虫が鳴いても
雨が降っても
哀しいと言ってみたくなる九月が始まる。
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