着々と四月の別れの支度する
梅の開花の便りが届く。
私と同じ地域にお住まいの方々であれば、すかざず結城宗広のことを思い浮かべることでしょう。
どれほどの昔においても、人は体制に背き、新しきに挑み、しかしながらその安泰に驕りを棲ませてしまい、やがては新しい反体制に滅ぼされてゆく。
結城宗広の時代にみちのくがどれほどまでに遠方でどれほどまでに僻地であったのかは想像を絶するものがあるが、武将たちが栄光を追いながらもその途上で朽ち果てることの無念さは数多く歴史に存在してきた。
それらの事実を想像すると、梅の花が北風に負けじと咲く姿は途轍もなく美しく思える。
梅が咲く。
どうして、この寒い季節に春を予感することができるのだろうか。春など、いや季節など巡ってこないかもしれないのに、梅のDNAは春を予感する。
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着々と四月の別れの支度する
と書いてみたが、いや実はその姿は、
黙々と四月の別れの支度する
のほうが良いかもしれない。黙々と…なんていうような、背中に美学を負ったようなものではなく、もっと悲愴的なのが私の現実なのだろうが、誰が考え出しのか、年度の始まりは四月なのであった。
梅の花が咲く枝で、その先に開花を待つ小さな蕾をメジロがついばむ。
それでも、幾つもの梅はやがて花を咲かせる。
透き通る青空と凍えるような冷たい風がよく似合う不思議な花だなと思いながらそっと匂いを嗅いでみる。
道真もきっとそんなふうにしたに違いない。
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