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2009年11月 8日 (日曜日)

絞る縄、綯うという言葉のゆくところ

 絞る縄、綯うという言葉のゆくところ

先日、実家に顔を出したら弟が藁を丁寧に選り揃えているので、何をしてるのか、と尋ねたところ、しめ縄を作るのだという。

--- あんた、おじいさんにしめ縄の作り方、教えてもろたん?
と問い直すと、
--- いやなあ、何も教えてもろてないな、見よう見真似や
という。

丁寧に一本一本つまみ出し、コツコツと藁を揃えている。そのうしろ姿が、父に似ているかな、と思いながら私は黙って見ていた。

綺麗に頭が揃ったところで、束にした藁の束を綯い始めた。ぎゅっぎゅっと力を入れるたびに汗が飛ぶ。

--- 見よう見真似で下手くそやなあ、きちんと教えてもろうといたらよかったな。

その作業をする小屋には、子供の頃、縄綯器械があって、農家の収穫が終わった秋の暮れのころは夜なべ仕事に縄を綯う父や母の姿があった。

新聞に「おやじの背中」という連載があるが、我が家の場合、この姿というものは単に淋しそうな背中であったというだけではない。その手先で何かの作業をし、決して大声にはならず言葉に力も込めず囁くように、それはまさしく呟くように語るおやじであり、取り巻く環境には明かりも乏しく、暖炉も無く、音も無かった。

縄綯器械のあった小屋の半分は壊して新しく立て替えている。藁を格納しておくような棚や米を貯蔵する蔵は今の時代には不要であり、小屋のなかには自家用車を2,3台放り込めるようにしてある。

弟がしめ縄をぎゅっぎゅっと絞る手が、強く込めた力で震えている。縄を綯うという言葉、しめ縄を作るという作業、もっと広義に見て、藁を使う文化にどれほどの価値が残されているのかはわからないが、絶滅させていい文化とは思いたくない。

--- 下手やな

と呟いていた弟であったが、それを備えてもらった神棚の神様が、そのようにお思いになったとは、私には思えない。

*

環境を仕事にしているが、エコポイントなどの事業にかかわるたびに、逆に、モノを大事にする心が失われていることを、合理性と同じほどに見直さねばならないと感じる。人が、暮らしの中で無から有へと知恵を絞り築き上げて来た文化を忘れてはならない。人は、単なる「考える葦」であった世紀を忘れてはいけない。そう思う。

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