木枯らし 〔2003年11月中旬号〕
木枯らし 〔2003年11月中旬号〕
木枯らしが一年ぶりに戻ってきた。
早朝の休日の国道は車の数も少なく、プラタナスの枯葉が舞っている。北山修が「プラタナスの枯葉舞う冬の道で♪」とうたったのは遥かに昔のことだ。本当にプラタナスの葉が京都の都大路を舞うのを彼は見たのだろうか。そんなことを考えながら鈴鹿山麓の職場に向かって車を走らせた。
日本海を渡った冷たい風は琵琶湖の北岸にある三国峠を越え、伊吹山と鈴鹿山系の谷間を吹き抜けてくる。本州の首根っこのように尾根筋が低い関が原付近でどっさりと空気中に含んだ水分を雪にして落とした後、鈴鹿の山から太平洋へと勢いよく去って行く。
11 月22日。御在所岳[1212m]の頂上には雲がかかっていた。しぐれているのだろう。車のフロントガラスにも小さな水滴が時々飛んで来る。少し手前にある入道ヶ岳[906m]の尾根に陽光が差し込み、紅葉した山肌がハイコントラストになって浮かび上がる。こうして冬を迎えれば、やがて、私はこの山脈から吹けてきて舞う小雪に毎朝迎えられて国道306号線を職場へと向かうことになる。
デスクのパソコンの電源を入れると県内の気象データを見ることができる。山頂の気温は1度以下、風は13メートル。北西。本格的な真冬の数字である。
ああイヤだ。…そんなことばかりも言ってもおれない。冬があるから春が来る。震え上がりながら3Fのコンピュータールームに入ったら、そこは20度の世界で、ひんやりと寒い。ああ、なんてこった!
でも、時にはいいこともある。正午ころ、藤原岳の方角に大きな虹が見えたのでした。これも時雨のお蔭なんだろうか。
PS:26日にはこちらの山の気象観測設備の設置完了の立会いで山に登ります。覚悟が必要そうです。
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