ゆきずり 〔2002年5月初旬号〕
ゆきずり 〔2002年5月初旬号〕
02/05/05
▼掛け声ばかりで自分はちっとも出かけない日が続いている。天気予報や観光地の混雑具合を気にしながら、結局は家にいた。GWといえば、九州や四国、東北を何度も懲りずに回った過去があるが、今年は諸般の事情もあるか。▼雨が降っていても走り続け、小さなひさしのある小屋でカ ロリーメイトをかじりながら休んだこともあった。そして、霧の咽ぶ山あいの峠道を越えて行く。▼民家の中にある小さな蕎麦屋に立ち寄る時間を惜しんで先へ急いだこともあれば、贅沢な時間をそういう店で過ごしたこともある。温泉だって同じで、手だけ突っ込んで次の目的地に向かうことがあった。余裕が無かったんだとも言えない気もする。好奇心が勝っていたとも言えるだろう。▼実際に行ってみたらつまらなかったという所もある。しかし、あとから思い起こせばそこだけの持ち味があった。さあ行くぞ!って叫んで、狙って行くようなところでもあるまい。早朝にテントを畳み、走り出したら、屋根から突き出した煙突から黙々と昇る煙と出会った。最高の気分である。狙って行ってもこんな気分は味わえない。▼景色にしても、人にしても、「ゆきずり」というのは何とも切ないもので、二度と味わいたくないよう気分であり、密かに期待をするような側面もある。▼旅先で出会った人の中には二三年ほど文通をしていた人もあったが、その後も継続している人は全くいないなあーと、今改めて思う。旅先でばったりと会うことなどもう二度と無いだろうと誰しもが分かっていながら、「またどこかで」と言って分かれてゆく。▼風薫るこの季節、「ゆきずり」にともなう寂寞感のようなものを刺激しつづける何かが、寄生虫のように体に棲みついている。★今年のGWの四国九州の天気はあまり良くなかったですね。走っているときは必死だから乗り切りますけど、辛い思いもあったことでしょう。でも、バイクに乗る人は、あの何とも言えないブルーな気分を共有できるから、お互いが分かり合えるんですものね。雨の真っ最中やその後の晴れ間の瞬間などに、ピースサインがフラッシュのように出てきますからね。
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