峠越え 冠峠 <岐阜県~福井県>
◆何げなしに峠を越えてきた。その峠に向かって行く道路沿いにダム湖が あったとしてもさほど気にせず湖岸道路をとばしたりしてきた。しかし、今回のツーリングではちょっとセンチな旅であった。(日帰470キロ)
◆岐阜県・徳山村。知る人も少ないだろうが、今は藤橋村に吸収されてしまった。その理由は、やがて旧徳山村が全村ともダムに沈んでしまうか らであった。廃村の面影は余りない。しかし、ただならぬ風が吹いているような気がする。山が野生味を帯びているのである。怒りのパワーに も思えるし、山々が自然に還っていく歓喜の叫びにも思えた。風が吹くと廃屋の前の大木が揺れる。鳥が自由に舞う。
◆休日だったからだろうか。何でもない空き地でバーベキューをする家族を見かけた。そこに予想以上に老人が多く混じっていたのは、廃村のこの地から追われた人たちが週末には帰ってきてるのだろうか。それを想像すると胸が痛んだ。荒れ放題の田畑がある。それが田畑だったかさえ解らないほど荒れている。しかし、地形的にみてもそれが自然の物でないことが解るし、畑の真ん中に自生している栗の木などは誰かが植えなければあんな所には生えていないはずだ。
◆道路は黙々と冠峠[1050m]に上ってゆく。穏やかな地形でありながら、峠方向には、冠山[1257m]や金草岳[1227m]、能郷白山[1617m]が見える。最後の集落で高倉峠[964m]よりは、冠峠のほうが通行できる可能性が高いだろうと教えてくれたので、分岐点では冠峠方面を選んだ。このあたりから眺める冠岳の姿が素晴らしく奇形で美しい。甲府盆地から上州へと越えたときに見た瑞牆山の姿を思い出した。
◆温見峠を越える予定だったが、工事中で通行不能という話だった。しかし、冠峠で話した人の話によるとこの峠が最も眺めが良いらしいから結果的には正解の選択だった。峠の舗装の上に頭ほどの落石が散乱しているなか、ガードレールのない上りを少しづつかせいで行く。福井県側は、野麦峠のような感じで谷が深く眺めも良い。時には娼婦のように…と口づさみ、大好きなベートーベンの7番をフルで口づさみ、世界は日の出を待っているを自分なりにアドリブでやっている。
◆さあ、走り終わったらJAZZマンに戻ろうか。そう呟いて峠を下り始めた。素晴らしい峠が私の峠越えのメッセージの最後になって、涙もひとしおであった。
ねこ
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