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2008年5月18日 (日曜日)

やまぶき

七重八重花は咲けども山吹のみのひとつだに無きぞ悲しき

ずぶ濡れになったままで聞かされたときに太田道灌は、果たしてどのような感情を抱いたのだろうか。

後になって兼明親王の歌と知るという伝説があるものの、この「みのひとつだに無きぞ悲しき」という言葉で表現される芸術作品の響きに、何を思ったのだろうかと気にかかる。


五月の田植えの合い間のシトシトと雨が降る夜に、一日の疲れを風呂で癒した後に居間で母は、「七重八重花は咲けども山吹のみのひとつだに無きぞ悲しき」という歌があって太田道灌が雨宿りを申し出てたときに断られたんや、という話をしてくれた。

何度その話を聞かされたのかさえ記憶に無いが、母は女学生時代にこの歌に感動したので息子に話したのだろう。

一度だけ聞いただけでも忘れない歌もあれば、何度聞いても憶えていない歌もある。この歌のどこを気に入ったのかは自分でも曖昧だが、悲しさに共鳴したのではないかと振り返っている。


山吹は恋の花である。古代の人は八重咲きの花を好んだのだろうか。薔薇にしてもそうだが、湧き上がるような熱情を花びらに感じるのだろうか。

黄色くて地味な花だと思う。一重咲きの山吹(ヤマブキ)は可憐な花で、庭にひっそりと咲かせておきたいような落ち着きさえある。

鼻を近づけると薔薇のような香りがする…はずだけど、その香りの記憶は無い。そう思うと嗅ぎに行きたくなってくる。


さて、

きょう、久しぶりに母を連れて買い物に出かけた。鰻が食べたくなったと言って私に町まで連れて行って欲しそうにしたのだが、そこにはまた別の理由があったのようだ。

妻と私と3人でショッピングセンターの中を歩いた。後ろ姿を眺めながら、そういえば子どものころの我が家の庭にはバラ園ができるほどの薔薇が咲いていたなあ、と思い出した。
母は薔薇がきっと好きなのだ。だから、山吹も好きだったのだろう。

まあ、そんなことに今ごろ気づいた。

そして、もうひとつ気付いたことがあった。
京都を離れるときに同僚の女性が「田舎に帰ったら花屋さんをするんでしょ。それが夢やって入社のころに話してなあ」と言ってくれて、その「いつか、花屋になりたい」と私に言わしめたものは、この歌か、庭に咲き誇った薔薇の花にルーツがあったのかもしれない・・・・ということだった。

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