ヘビイチゴ
通勤にJRを使うようになって、車窓からの景色を楽しむことが増えた。
気候や天気のおかげで日々刻々と変化し、決して見飽きることがない。
人は、朝日を見て一日の始まりを引き締め、夕焼けを見て今日の自分を労わっている。ネクタイを緩めカバンの中の文庫を取り出すものの、ふと車窓から眺めたそこに、蓮華畑と麦畑が広がっていて思わず目を奪われてしまった。
この感動を丸ごと写真に納めたり絵にすることは難しい。やはり感動というものは、隣にいて同じ景色を黙って見つめることから始めねばならない。
効率化、簡素化などの波が押し寄せ、自由とい旗のもとマネー主義の嵐が吹き荒れ、人の心が荒廃してゆく。
寂れるものを二人でじっと見つめることで、寂れさせてはいけないものを丁寧に拾い上げるという至って単純であり重要な手続きを社会は御座なりにしている。
何の変哲もない田舎の平野。
その向こうには夕日が沈む山並があり、麓には脈々と流れ来る河川の水の恵みがある。
麦畑に隣接する水田に水が満たされ鏡のように光る。昔の人はこの水田に朧な月が姿を映す自然に感謝し、子どもは蓮華の花畑で戯れて逞しくなった。
思うまもなく田植えが始まり麦畑が緑から黄金色へと変化をしてゆく。
巡りゆく季節のなりわいのおかげで私たちは暮らしているのだということを忘れてはイケナイのだ。
景色ばっかし眺めていて、一向に読み進まない司馬遼太郎さんですが、菜の花が好きだったといいます。黄色い花は、赤い花が情熱を発散するのとは対照的に、自然のなかに生存する逞しさのようなものを届けてくれるような気がします。
黄色い花の写真を知人(木村さん)が
HP
にあげていたのでちょいとお借りしてきました。
ヘビイチゴの花
ふるさとの沼のにほひや蛇苺 (水原秋桜子)
私の大好きな句です。
蛇苺の実
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