サンタのブーツ
日が暮れきってしまった時刻に、スーパーの駐車場に車を止めようとしたら、ちょうど時雨に見舞われた。
しゃあない、走るか。ということで少し走った。
知らない間にすっかり風が冷たくなったなあ、と走りながら思う。髪が濡れるのを避けて、頭に手をかざして息を止めて走っている。
放射能の雨が降って、髪が抜けることもない。平和な時代だけど、「うつくしいくに」=(逆さまから読んで)「憎いし苦痛」な時代やで、と考えたりしている。
たかが、駆け出しただけの短い時間のなかで、様々なことを思っている。
明るい店先に飛び込んだら、ぱっと忘れてしまう。
真っ赤なサンタのブーツが山のように積まれている。誰に贈るわけでもないのに買いたくなってくる。
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人並みな会社人をしていたころは、こんなお祭りなどには目もくれず、社会の流れの外で黙々と働いていた。今でもそういう人は多かろう。
どこの家庭もが寝静まったころに駅をおり、冷たい闇夜の道を急ぐのだろう。瞼の裏に描いているのは明るい玄関と暖かい夕食なのだろうか。
サンタのブーツが店先に並んだことも知らないで働く人。きっと、そんな人はmixiなんて世界も知らないでいるのかもしれない。
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ちょっと仕事が忙しくなって、ぼんやりする時間がなくなると、夕暮れの路地を急いで帰ったことがあった昔を思い出す。明かりの漏れる団欒の部屋から声が聞こえてきて、すき焼きの匂いが漂ってくることもあった。
サンタのブーツ。
仕事が忙しくなっているのでスーパーへも行く暇がないから、しばらくお目にかかれないな。でも、何故か、思い出すだけでも嬉しくなる。
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