ブックバンド
懐かしい響きだ。そうお思いのかたも少なからずおられましょう。私のよめはんも女子大時代にはときどき使ったという。
想像してみるだけでその当時の電車の中の学生の様子が甦ってきます。今ではちょっと珍しい光景だ。
娘のPCをセッティングするために京都に滞在して、私たちが学生だったころの話に花が咲いた。
・ GWが過ぎたら出席する学生数が激減すること
・梅雨に入るとさらに減ること。
・ 私なんぞはその減った方の側で、久しぶりに大学に顔を出すと
「よぉー久しぶり!試験のできはどうだった?」
と学友から声を掛けられ、
「試験があったんか…」
と肩を落としたことが数え切れぬほどあった話。
そのころ、講義のテキストを男子学生は、Madison Square Garden のスポーツバックに入れて持ち歩くか、または、ブックバンドで十文字に縛って持ちあるいていた。解析学概論、電磁気学演習、なんていう本を見えるように持ちあるくのは、ブランドかぶれの今の若者よりも颯爽感が高かったともいえるかもしれない。
しかしながら、私自身は時代の流行りには無頓着な奴で、一年中同じ服を着て二枚羽の下駄を履いて街へ出たような奴だったので、ちっとも格好良かったわけではなかったのです、決して颯爽とはしてなかった。汚い髪を肩まで伸ばし、1年ほどたつと手におえなくなるので自分で散髪をする(友人に頼むこともあった)ビンボーな学生でした。
PCをセッティングしながら机上に置いてあった本 ─ それは図書館で借りてきた「潮騒」(三島由紀夫)だったのだ ─ をちょっと拝借して読み始めたら止まらなくなった。面白いというか、若者の心の普遍性をうまく書いているのが小気味よい。三島のことをこんなに深みのある美しい文章を書く人なのだと、若き時代には考えたりしなかった。つまり、文学作品の品揃えのひとつとしてしか捉えず、義務のようにして読んだのだが、私が大人になったのだろう、これを味わうことができるように変化しました。
三島の話から映画の話へ。そして、映画の主役であった吉永小百合、山口百恵と話が移り、三浦友和の話にまで及ぶ。
(余談だが、)若きそのころ、わたしも(目の細いところが)三浦友和似ということで、実はそれほど似てないのだろうが、よめはんもその話に乗ってくれて
「お父さん、、、まあまあ似てたかな」
なんて話をあわせた。
すみません。ブックバンドの話は出てこなくて・・・・。その話が展開して、いよいよです。
ただただ、懐かしき学生時代。
あのころの若者は、大学生という身分にある種の特権を感じていて、しかもそれを裏切らないように生きていた。ある意味で一途だったとも言えようか。
学内にはベトナム戦争反対集会の爪痕が残り、団結などというペンキの落書きのような文字も残っていた。
もちろん、パソコン、ケータイはおろか、電話も無い。風呂付きの下宿に住んでいるような奴は、親の甘い汁を吸って生きている軟弱者だった。就活なんていう言葉もない。
(語ればキリがないので書けないけど、そんな時代背景の中で)
ブックバンドは、若さの象徴であり、子どもらしさの表現でもあった。
もしも復刻したとしても、持ち主を外からしか表せない薄っぺらなモノにしかならないだろう。
いや、「今の若者自体が薄っぺらい…」と書いたらジジイになったのだと指摘を受けることになるのだろうか。
…というわけで、「娘よ、厚みのある人間を目指しなさい」、というような話をしたかったのだが。
PC買ったし、娘の mixi 参入も間近かね。
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3日間、京都でまったりしてました。
雨でした。
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