いきいきと三月生る雲の奧 飯田龍太
いきいきと三月生る雲の奧 飯田龍太
この便りを編集している18日はお彼岸の入りです。ひと雨ごとに暖かさが感じられるようになってゆくのがよくわかる季節です。
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春に三日の晴れ間なし
雨の日は読書などいかがでしょうか。
以前、関野吉晴著 「グレートジャーニー ─ 地球を這う」という本を紹介したことがあります。
約400~500万年前にアフリカのタンザニア・ラエトリに人類は誕生します。その人類が、百数十万年前にアフリカを飛び出し、ユーラシア大陸を横断しベーリング海峡を渡り極北の地を越え、北米を経て、ついには南米大陸最南端のパタゴニアへと到達する。
東アフリカから南米大陸に至る5万キロに及ぶ大遠征の壮大でロマンに満ちた道のりを、関野吉晴さんは逆ルートで辿ります。まさに、グレートジャーニーと呼ぶに相応しい感動的な旅です。
シベリアのコルフという町にやってきて、食料・雑貨店でインスタントラーメンやスナックを買って宿で食べたとき、
「みるみるうちにごみが出てくるので驚く。日本では当たり前のことなのだが、トナカイ遊牧民のキャンプから帰った直後だったために、強い印象を受けたのだ。」
「遊牧民のキャンプではほとんどごみが出ない。トナカイは余すところなく食べる。野菜などの生ごみはトナカイや犬が食べてしまう。基本的に一番無駄な『包装する』ということがない。缶詰はほとんど食べない。」・・・と書いています
また、魚やカニなどは各家庭や親戚で分配するが、大きな鯨が獲れたときに、
「分配という行動は、高等なサルのあいだでも見られない人間特有のものだ。」「ここシベリアでも、狩猟民の間では分配がごく普通に行われていた。」「この人間を人間たらしめている行動様式は、われわれの社会ではいつの間にか影を潜めた。いい車を持っている。立派な家に住んでいる。モノを独り占めする者が、社会的な地位を獲得するようになっているように思う」…とも書いています。
素朴でありながら、冷静な分析ですね。いかがでしょうか。
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関野吉晴著 ちくま新書 ; グレートジャーニー 地球を這う
(1)南米~アラスカ篇 ¥998 (税込) / (2)ユーラシア~アフリカ篇 ¥998 (税込)
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