金森敦子
関所抜け 江戸の女たちの冒険

なんて魅惑に満ちたタイトルを作者はつけたのだ。

江戸の旅人は、今の時代の人々より純粋に旅を楽しみ、人間を味わい、生きるということを肌身に感じて歩んでいたのではないだろうか。

そんなことを常に考えさせられながら、江戸の庶民の文化や暮らしの苦味に触れたいと思いつつ、この難しそうな書物を手に取ったのだった。

作者の著作には、「芭蕉はどんな旅をしたのか―「奥の細道」の経済・関所・景観」という作品や「きよのさんと歩く大江戸道中記」(ちくま文庫)というのがあって、文献を読み解きながら暮らしのひとつひとつを確かめて読んでゆける。ちくまに1冊あるというのも惹かれてしまう要因かもしれない。

地理に詳しい人なら、地図はいらない。
奥の細道を地図なしで頭に描けるならば、金森さんの本はすらすらと読み進むことができる。

江戸時代に飛び込んで、今の時代劇などのレベルではなく、もっと庶民の心の内緒のところまで触れながら、いかにこの時代の人が生きていたのかを知ることができる。経済成長がほとんどなかったのだろうという江戸時代に生まれた人たちは、不幸だったのかというと決してそうではなく、生きるということ、生き抜いてゆくことに対して非常に強かだったのだ。

旅物語として読んでは、もちろんイケナイに決まっている。学ぶべきことがいっぱい詰まった1冊だ。

贅沢を望めば、私はもっと主人公よりも貧しい暮らしの人の日常が知りたかったかな。