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宮本輝;にぎやかな天地(下)

上巻で、勇気を生み出すものは自分自身の決意だといった。

そして、その決意は、生半可なものではなく、「勢いのあるときは、がんがん行きなはれ」(下・129p)というような言葉で背中を押しているように、若さ溢れるモノであって欲しい。

*

ヒトは、自分ひとりで生きているわけでもない。銭や金を追求して、まして損得だけを求めてこの世に存在をしているわけではないし、そうあってもいけない。

お互いを慈しみあいながら、授かった命を天からのものだと思い、一生懸命にまっとうに生きていかねばならない。

宮本輝は、この「まっとう」にという言葉を、大事なところですかさず使ってくれる。

熊吾から戴いた命を守りながら、ここまでやって来るまでに自分の人生に多くの影響を与えてきた人々や環境、暮らした町のあらゆるもののお蔭で、こうして暮らしているという敬虔な気持ちが根底を流れているのだろう。

生きることと死んでいること、運命ということを、なおも考えつづける。

*

上巻で少しざわめき始めた主人公の身の回りが、さらに賑やかになってくる。
なるほど、これが「にぎやか」と宮本輝が最初に構想していた人々(登場人物たち)の生業だったのだ。

にぎやかなヒトの上昇気流を「命の振動」と同期させ(259p)、「冥利」という表現で提起し(296p)、「心は巧みなる絵師の如し」(302p)という言葉で私たちの心のなかに、この物語の大事な主題を(気持ちを)そっと置いてくれる。

下巻の後半、彼の初期の頃の作品のような、湧き上がるような響めきを投げかけながら、物語りが走り続ける。
私たちに勇気というものを、「ほら、後は自分で考えなさい」、というように。
| 2008-05-22 20:39 | 読書系セレクション |