さらば、夏の光よ

一時帰省をしていた娘に、
「わたしが・棄てた・女」と「さらば、夏の光よ」
を持たせようと思ったら、
持って行かんというので、私が読みました。

遠藤周作、30年もの。拾遺選シリーズ。

映画にもなってるけど、あれはアカン。
郷ひろみと秋吉久美子。
いわゆる、アイドル映画にされてしまったんだなー。(悲)
ジェームス三木が若いときにシナリオを書いたんですが、
若いという点では、いい。

*さらば、夏の光よ (講談社文庫)
*遠藤 周作
*講談社

遠藤周作という人は、ほんとにお茶目で悪戯好きだったという。売れっ子作家でありながら人間味もあった。

それには、理由があって、彼自身が常に弱者というものを見つめていたし、弱者の立場も理解をしていた人だったからだろう。

純文学作品を幾つも書き上げしっかりとしたファンを捉え、このような中間小説で、化けたような側面も見せてくれる。

しかし、遠藤周作の全ての作品の(今風に言うと)ネタ帖を、ガラガラと広げて掻き集めて物語に仕立て上げたのがこの作品だ。

彼の日常から超マジな顔までを知っている、すべての作品を読んだ人だけが分かる快感だ。

哀しい目をした小禽や犬たち。報われず注目されないサエナイ奴ら。もてない男。
そして、通りすがりに「まるで小石を見るように」気にとめられない人たちが、それぞれの人生というひとつのレールの上で交差し、まさにドラマを成してゆく 展開。

どの小説でもそういう「弱く」て「哀しく」て「儚く」て「無力」な人々が織り成す物語に、分かっていながらも引きづり込まれてゆく。

どうしようもない哀しみと、解決のしようのない運命のようなものを引きづりながら、読者である私たちが「どん底」に突き落とされるような閉塞感に襲 われないのは、まさに遠藤周作のポリシーが燦然と美しいヒトの心をマリア様のように輝かせながら書いているからだろう。

遠藤周作が42歳。情熱を漲らせているときに書いた作品です。優しいくせにイジワルそうにふるまう彼の笑顔が蘇えるような作品ですね。
| 2008-06-27 22:03 | 読書系セレクション |