ものすごく大きな期待を持って読み始めた。
県立図書館にしかなくてしかも書庫にあったものを出してもらって最寄りまで取り寄せて読んだのだから。

旧仮名遣いなので戸惑いながら読む。

このごろの文芸作品は、常に読者に逃げられまいとして、一行一行が勝負のような物が多いように感じている。書き手も売りたいし目立ちたいし優秀と求めてもらいたいし、当然読者にも喜んでもらいたいとだろうけれど。

この作品はそういうチャラいところはなく懐かしい文芸作品を読ませてもらっているという感触だ。大学時代に古本屋で掘り起こしてきた、わたしのとっては無名だった作家の作品のようです。

作品自体に、重厚な重みと怖ろしさのようなものを秘めているのだ。

種田山頭火との出会いを発端に、主人公は分析をするのですが、小説ですから、架空のことも混じっているのでしょうね。サスペンスタッチでなんて表現を感想に書いている人がありました。小説手法としては、面白い試みだったのかもしれません。

作品は、難しいです。文學に無関係なわたしにしたら英語の科学技術の学術文献のほうが簡単かも。

でもそこは山頭火のことを、わたしの知らないこともたくさん掘り下げて書いている。落ちは、やはり小説っぽく収束してゆきますが、丸谷才一のプライドですね、ここまできたら。

文学者のようにわたしにはその高貴さがわかりませんが、いい作品でした。現代の棚積みのベストセラーと比較したら叱られるかもしれんですが、文學の味わいが感じられない「◯◯大賞」などを見てると、時代が文化をも変化させるのでしょうが、やはりそれは罪悪だとこの作品を読めば言い切れます。

横しぐれ。
この言葉の重たさが、作者には言葉に出来ないほど痺れてきたんでしょうね。
わたしも、この作品を読んでいるうちに、何て素晴らしい言葉だろうって思います。

時代がスローに歩んでいたころは、こういう言葉をしっかりと噛みしめる文化があったのだな。

県立図書館の書庫ですよ。県民の文化レベルを何とかせねば。
書庫から出して、入口横の棚に入れて欲しい。
村上春樹は書庫でいいから。
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丸谷才一 横しぐれ