平成24年10月14日図書館で借りて
(第2巻の写真は省略します)
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スティーブジョブズ、という本を読む。

これは彼の伝記だ。

だから一般的に彼という人物のことが何のフィルターもなく書かれているのだろう。

今、アップルをひとつの信仰のような感覚でこの会社を見て、この会社を築き上げてきた人を知りたいというのであれば、この伝記は最高のものだろう。

私はアップルのパソコンや携帯電話を使っているし、素晴らしい製品を提供している勇気のある会社だと思っているものの、逆にこの伝記を読んで少し冷めた感覚も持ってしまった。

そういいながらも、現在、ウィンドウズというマヤカシのようなOSが社会を左右している現実を見ると、MAC OS X は、細かいところまで心を配った完成された面も多く、この人の成し遂げたことは大きく評価できると思う。

つまり、ジョブスが勇気と信念を持って製品を作り上げてきた過程を読むことは、企業経営とか一社会人の意気のあり方を考えるにはとても適している。ベンチャーな精神を持っている人も背中を押されるのだろう。

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見えないところまでも気を使って美しく仕上げるということに触れている。

こういうことを堂々といえない社会が出来上がりつつある。例えば成果主義とか合理主義という神懸かり的論理がそうだ。

無駄なところまで余計な費用を使って、例えば買ったあとに直ぐ捨てられてしまうようなパッケージのようなものや、使う人の眼に触れないようなところの品質に拘る必要などないとする現代の品質基準の中で、ジョブスが眼に見えないところまで完成されたものを提供することに拘ったことが素晴らしい。

私の父が木の彫刻を作っていたときのことを思い出した。父は、床の間に飾るその木の置物を削ったり磨いたりして骨董の味を出させるのだが、あのときの父の気持ちは見えないところも美しく仕上げようという自然の思いがあったと、今更ながら気づく。

パナという会社に何年もいて商品の開発に携わってきた私だが、あの会社にはそのような発想は全くなかった。もしもそういう着想が芽生えそうになったとしても育み芽を出せるような文化さえもなかった。枯れていたのだ。

そのことを振り返るだけで、美しいものを、おそらくひとつの作品を見守るような気持ちで世に送り出そうという企業文化や雰囲気を、その会社に植え付けた人物は素晴らしいと思う。

(だが、パナの崩壊を見ても歴然とするように、アップルであっても未来に保証はないのだが)