ごそごそと詠み始める。
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川上未映子
ヘヴン
(講談社文庫)

そこまで辿り着くために、じっと堪えねばならない人たちが今でもたくさんいるのだろう。
人は、この小説のような状況であっても、もっと平和で理想的な情熱サラリーマンの日常であっても、またモラトリアムな学生時代であっても、自分を見失いそうになって、ときには自分をすっかり見失ってしまうこともある。

しかし、自分を見失っているのか、自分を見つめているのか、いったい誰が判定してくれるというのか。

自分が、いったいどんな空間を彷徨っていて、どんなふうにみんなに見られているのか。そんなことなど誰がどうだとも断定できないのではないか。

そもそも、私って何のためにいるのか。誰のために生きているのか。私を必要とする人がこの世の中にどれだけいるのか。

幸せってなんだろうか。

次々と押し寄せる疑問と不安の嵐の中でもがいて苦しんでいることと、みんなに虐められていることの辛さと、同じものさしで測ることなんてできっこない。

生きていることと死んでいること。幸せと不幸せ。
赤と黒。あなたの赤は私の黒色かもしれないという不安。

青春時代には、あらゆる魑魅魍魎としたものが私を覆っていたのだけど、私は1人で生きてきた。生きてきたのは1人だけれど大勢の人たちに励まされて生きてきた。

ちょうど、朝日新聞でいじめの記事を連載している。虐める側の声や論理を聴きたいと私は思うのだが、それはどこにもないのだ。

へヴンって何よ!
と問うてみる。
この小説は、つまらない小説で、文芸の味もそれほどしない。
それが良さなのかもしれないし、そこに魅力が潜んでいるだろうとも思う。

私はへヴンという夢を追い続けるささやかな虫で、へヴンを語ることは何もできないけれど、誰にも気づかれないように私を見つめてニコッとしてくれる人が1人いれば、それで幸せだ。

ずっとそんなことを、読後、考えている。