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BOOKs【読書室】

2020年2月 8日 (土曜日)

斎藤末吉先生が「深い河」解説の中で


目次は写真をクリックすると出ます

 

どこを読んでも講義が蘇って来るようです

 


深い河で検索をしました

  • 遠藤周作 悲しみの歌 (続・感想)
    年早く逝ってしまった。 晩年のころには、深い河という作品も残し、新人のころの硬さと美しさをも蘇らせ、成人期の柔軟さも加えた作品にまとめる術を見せてくれた。そ...
  • 銀マド:読書系にあったタイトル
    時宮本輝;にぎやかな天地(下)遠藤周作 深い河宮本輝;にぎやかな天地(上) おぼえがき詩集 散リユク夕ベ  銀色 夏生灯のうるむ頃 遠藤周作遠藤周作 楽天大...
  • 読書系 遠藤周作セレクション
    生1部キクの場合女の一生2部サチ子の場合深い河深い河2聖書のなかの女性たち青い小さな葡萄灯のうるむ頃白い人黄色い人母なるもの青い小さな葡萄 青い小さな葡萄遠...
  • 読書力のこと
    だったじゃないの」遠藤周作は晩年の著作「深い河」でこのような言葉でテーマを考察している。様々な言葉の中で、非常に含蓄の深い言葉だと思う。eデモクラシーは、何...

 


遠藤周作は1996年9月29日午後6時36分肺炎による呼吸不全のため、慶應義塾大学病院で死んだ。73歳であった。葬儀告別式は、10月5日午後1時半から東京都千代田区麹町6-5-1   聖イグナチオ教会で行われた。喪主は妻順子さん。9月30日付朝日新聞の朝刊は弱者に優しい眼差しという見出しで報じていた

 

深い河を1913年6月講談社から刊行され翌年1月毎日芸術賞受賞した。その成立には深い陣痛が伴っていた。深い河創作日記は1991年8翌年11月29日終わっている。初稿が脱稿したのはこの年の秋9月8日であった。平成5年5月25日腎臓手術前後の闘病日記は口述筆記である。

 

「平成3年も最後の日なり。余、病弱の身にて漸く68歳の年齢を終えんとす。昔日、50歳まで生きればと思いたること、夢のごとし、今日まで理解してくれる生かしてくれた神に感謝せざるべからず」

 

翌年正月には、血圧170から90となり、1ヶ月以上の目眩(30日)が続き、腹痛、頭痛を訴え、書くことの苦しさ、挫折感(3月6日)さえ訴えている。そして4月21日「血痰」を見る。小説を書く気力も失せ(7月19日) 30日はこう書いている

 

「なんという苦しい作業だろう。小説を完成させることは、広大な、あまりに広大な石だらけの土地を掘り、耕し、耕作地にする努力。主よ、私は疲れました。もう70歳の私にはこんな小説はあまりに辛い労働です。しかし完成させねばならぬ。マザー・テレサが私に書いてくれた。(God blesse you througt your writing)

 

こういう状況で9月8日、ようやく初稿を脱稿したのだが、やがて腎臓の異常が見つかり「余命の少なきを感じる」(9月24日)。「自分の死がいよいよ近づいていることを思う。どういう状態で、どういう苦しさで死ぬかを想像」(10月21日)する。これらの日記を彩っているのは、終末の予感である。10月24日腎臓病で入院。翌月、糖尿病の併発も判明。「自分の晩年が盲目になるやもしれぬとは考えもしなかった。人生の最週末が悲惨な結果で幕をとじるとは考えもしなかった」(11月7日)と……

 

平成5年5月21日順天堂大学病院入院。いよいよ腎臓の手術。

「今日の手術ほど痛く。有楽、堪えられぬものはなかった。途中このまま殺してほしいと何度も思った。痛み、激痛起こり、唇も下もカラカラに乾き、一秒でも早く手術が終わることばかりを念じつつ、二時間半を堪えに堪えた。(略)七十の体にはあまりに辛い一日だった。(略)この小説のために文字通り骨身を削り、今日の痛みをしのがねばならなかったのか。」(5月25日)

その後、作者は1995年9月、脳内出血で倒れ、順天堂大学病院に入院し、12月退院。又翌年四月、腎臓病治療のため慶応義塾大学病院へ入院し、9月29日、午後六時三十六分、「肺炎により呼吸不全」のため不帰の人となったのである。

 

 

 

2019年10月 6日 (日曜日)

かくして、ようやくおぼろげながら判ってきた執筆の目的は、私という人間の阿保さ公開することにあるらしいのである。 だから、私のくだくだしい話の数々は、何人のためのものでもなく、私にとっても恥を後世に残すだけの代物である。 しかし私は、私が事に当たるたびに痛感する阿保さ加減を、かくす所なくさらけ出しておきたいのである。

かくして、ようやくおぼろげながら判ってきた執筆の目的は、私という人間の阿保さ公開することにあるらしいのである。

だから、私のくだくだしい話の数々は、何人のためのものでもなく、私にとっても恥を後世に残すだけの代物である。

しかし私は、私が事に当たるたびに痛感する阿保さ加減を、かくす所なくさらけ出しておきたいのである。

(第九話 鱶の湯びき 冒頭から)


 10月6日に正式に読み終わっのでまたゆっくりと感想などを書きたいと思っております

2019年5月26日 (日曜日)

向田邦子 を思い出してみる

検索結果(24件ヒット)

 

  1. 歯をくいしばる
    向田邦子さんが「眠る盃」の中の「水羊羹」で書いているのが面白い。水羊羹は、ふたつ食べるものではありません。歯をくいしば...
  2. 向田邦子 夜中の薔薇
    写真をクリック平成25年10月28日購入向田邦子を読んでいます。飛び切り古いものを買ってきました。飛行機事故で亡くなられたのが1981年8月22日ですので、そ...
  3. 向田邦子 夜中の薔薇  (予告篇)
    向田邦子を読んでいます。飛び切り古いものを買ってきました。飛行機事故で亡くなられたのが1981年8月22日ですので、そ...
  4. 十月尽
    物語の始まりと見てみたりしております。◎向田邦子を読んでいます。飛び切り古いものを買ってきました。飛行機事故で亡くなられたのが1981年8月22日ですので、そ...
  5. 「オススメ」を何冊か
    よ◎ 車谷長吉 赤目四十八瀧心中未遂◎ 向田邦子 思い出トランプ◎ 福永武彦 忘却の河◎ 林芙美子 放浪記◎ 宮本輝 宮本輝全短篇 上下◎ なかにし礼 赤い月...
  6. 向田邦子 あ・うん
    この作品を読み始める前と、読み終わったあととで、これほどまでに装丁の味わいの違う作品も少ない
  7. ふとしたことから
    としたことから、昔に書いた読後感層の「 向田邦子 男どき女どき」を読み返す機会があった。 その中で、いしぶみのことについて書いている。 「...
  8. あうん
    ◎ 向田邦子 あうん◎ 帚木蓬生 閉鎖病棟ツマを待つ時間、ブックオフに寄る。 桜餅と鶯餠 夕方、家に帰って炬燵に潜り込むと...
  9. 向田邦子 三冊をアルバムに
    思い出トランプ 父の詫び状 男どき女どき
  10. 言葉の断片から
    める。静かに読める作品たち。 □ 今年は向田邦子も読んだ。 -- 向田邦子 「花底蛇」 花をいけるということは、やさしそうにみえて、とても残酷なことだ。花を切...
  11. 向田邦子 男どき女どき
    るし成功もする。 幸運と不運。明と暗。 向田邦子は、そういう苦楽を肌で感じていたのだろう。わたしの母より2歳年上だから生きていればもうすぐ81歳になるのだが、...
  12. 秋彼岸すぎゆく九月を振り返る ─つぶやく十七音〔彼岸篇〕
    ただそのことだけで嬉しい。 買ったのは、向田邦子「男どき女どき」 ▼久々の駅待合せ白墨の、伝言板今はなくなり (23日)─木 墓参り。 雨がザザザと降って、雷...
  13. 久々の駅待合せ白墨の、伝言板今はなくなり
    だそのことだけで嬉しい。でも買ったのは、向田邦子「男どき女どき」いつもより1本遅いJRで、ひとつ前の駅で待ち合わせ。▼久々の駅待合せ白墨の、伝言板今はなくなり...
  14. 倉本聡 優しい時間―Scenario 2005
    たいものだ。シナリオ文学っていうのかな。向田邦子さんとどっちが人気だろうね。読書部Ⅱ レビュー倉本聰 優しい時間| 2009-12-19 10:51 | 日記...
  15. 読書系 よもやま
    と、そっちのコーナーでくつろいでしまう。向田邦子の関連であったり山頭火の句集であったり(ちくま)文学全集の文庫のぞれぞれであったり(岩波)文芸文庫であったり。...
  16. 細雪 上中下  谷崎潤一郎  
    に関わる日記を書き写しながら読んでいる。向田邦子さんの作品を読みながら「細雪」を読んでいたことがわかる。細雪は、娘が大学の講義関連で、たまたま読んでいて、私も...
  17. 向田 邦子 思い出トランプ
    じように、今は、テレビでも映画でもない、向田邦子の文芸を読んでみて、コレダと思った。 今、直木賞なんて意識しないままで、作品の賞なんてのはどうでもいいよ、と思...
  18. 向田邦子 父の詫び状  (昔に書いた向田邦子)
    (昔に書いた向田邦子) | 2009-06-12 21:04 | 読書系セレクション |父の詫び状文藝春秋向田邦子-----決して...
  19. ちょっと立ち寄った古本屋にて (昔に書いた向田邦子)
    (昔に書いた向田邦子) | 2009-05-19 22:48 | 読書系セレクション |先日、時間調整で立ち寄った古本屋にて◎父の...
  20. なかにし礼 セレクション
    和32年の年始から物語が始まる。ちょうど向田邦子の「父の詫び状」と同時進行で読み始めたので、なおさら面白い。笑いながら、私たちの子どものころを思い出す。失って...
  21. 凪の刻消えたさざ波がまぼろし
    。ゆっくり読んでゆくのがいい。その間に、向田邦子;思い出トランプ、を読み終わった。こういう作品は、速読してもいけないし、流して読んでもいけない。解説の水上勉さ...
  22. 海苔巻きの端っこ好きで小春日で  藪ノ内君代
    っこ。 うふふのふ。 すきすき。 ねえ、向田邦子さん。---藪ノ内君代さんの句、他にも〔ネットから〕たんぽぽの井戸端会議に参加する母さんが父さん叱る豆ごはんつ...
  23. 伝承すること、モノ
    思い出します。 先日、シナリオ作家だった向田邦子さんのエッセイを読んでいましたら、玄関や式台に置かれた足ふき雑巾の話、「よそいき」服という言葉、パジャマの上か...
  24. 倉本聰 優しい時間
    る。でも全然、調べたくないか。ちょうど、向田邦子さんを思い出していたところだったので、彼女のドラマと対比して倉本さんのドラマを考えてしまいます。好き嫌いの話で...

2019年3月26日 (火曜日)

木本 美紀 蒼い空へ:夫・西城秀樹との18年

BOOKs(読書日記)



蒼い空へ 夫・西城秀樹との18年 木本美紀
という本を読んでいます
先入観は全く持たないで読む なかなかいい本です


--


読み終わってしばらく考えていました 

やはりいつものように感想を残します 

読んだ後に感じたことっというのは 
時間が経つと薄れていくけど 

今の感想を書いておこう 

でも 
18年間も闘病生活をしたのね 

木本 美紀 
蒼い空へ:夫・西城秀樹との18年 


--


この本を読んで西城秀樹のファンになった 

それまではそれほど関心があるわけではなく 
スターでありアイドルであったむかしを知っているだけだった 

私は男子なのでそれほどアイドルに関心があるわけではないし 
ヤングマンなどというヒット曲を贔屓にしているわけでもなかった 

この本はアイドルやスターであった西城秀樹を書いたものではなく 
脳梗塞で倒れた西城秀樹とともに闘病生活をした奥さん、木本美紀さんが想いを綴ったもので 
それを読むことで私たちは西城秀樹という人の側面に触れることができるのである 

かつてスター・アイドルであった 

しかしそれはひとつの歴史的ページにしまわれようとしていて 
その後の世代の人たちからすればある種の異文化であり 
別時代のドラマになってしまう 

彼が闘病をしていたことやその中身を詳しく知りたいとは思わない 
そういう人もいるだろう 


私は 
むしろ一生懸命で真面目で前向きに生きていた姿の 
ほんの一面に触れることができて 

それがひとつの人生であったことを読者なりに考えている 

人によったら自分の人生と照らし合わせる人もあろうし 
むかしファンであったアイドルが残してくれた 
もうひとつのメッセージとして受け取る人もあろう 

とても綺麗な読後感を齎してくれたと思う


 

2018年11月 2日 (金曜日)

清原和博 告白 

なかなか感想を書こうとしなかったのですが
深い訳があったわけではありません

これだけの業績を残した人なのだから
それなりに讃えたいと考えたのでしょう

親近感もあるのでしょうかね(身近な人には自明なことでしょうが)

悪いことをしたのでそれを責める人もありますし同情を寄せる人もあります
刑事的なことはご本人の問題ですし、処罰も受けているわけです

刑期を終えたら元のようにTVなどにも出てくればいいと思います
過去の栄光を話して人材育成につなげてもいいのかも

違ったステージで上手に生きていけそうもないので
自分を磨いて道を開いて欲しいです

消えてしまっては寂しいですから
野球と関わりのあるところにいて欲しいと
そっと思っています。

清原和博 告白

2018年9月17日 (月曜日)

辻原登 抱擁

今朝から辻原登の読後メモを書いたり
なかにし礼の夜の歌を読み返したりしながら
早起きしてまたもう一度うとうとしたりして
午前中を過ごしている

辻原登 抱擁

話題になるわりには 味わいにかける作品が
本屋のワゴンに高く積まれており
読み終わった人もああよかったとつぶやいている

そんな様子に賛同できる時よりも
残念な気持ちになる時の方が多い日が続き
世の中に行き渡る書物の味も随分変化したな
と思うと同時に
やはり
味わい方がつまらなくなった人も多いのではないか
と頑固を言ってみる

辻原登は裏切らなかったのである
花はさくら木 を新聞に連載している時から
惹かれるものを感じながら
後回しにしていた

ふと、本当の御目当ての本を探しに
大きな本屋に立ち寄ると
本命の本は当然のことながら
置いてもおらず(絶版に近いのだろう)
ハッとする本に出会う

辻原さんの解説を宮下奈都が書いている
そいえば、宮下奈都さんがそんなことをつぶやいていたのを思い出した

宮下さんに
宮下さん 辻原登を読み始めてますよ 辻原さん素晴らしいわ 迫るものがある 小説に力を感じた
とツイートを送ったら
まったくもって辻原登さんは素晴らしいのです
とリプライが返ってきた

背中を押されたみたいで
余計に満足な一冊となりました

2018年9月16日 (日曜日)

なかにし礼 夜の歌

🌱

夢の跡
あなたの書いたその詩集
きらめく言葉の泉のそのむこう
そっと隠した涙の跡がそこにある

🌱

なかにし礼「夜の歌」を読んでいますが
憎悪と嫌悪があふれた
全力で綴った自伝であり
これは遺言でもあるのだ

BOOKs(読書日記)

なかにし礼 夜の歌

なかにし礼 夜の歌 感想

戦争という暴力がまき散らす災禍の中では人間の知恵などという姑息なものは通用しない。大きな偶然があるだけだ

戦争を知ると、人間の悪の部分をたっぷりと見る。でも知らないと、自分が傷ついて死ぬことも想像しようがない。想像力を相当に働かせてもらいたい

作品のことに触れて終戦記念日のころに掲載された新聞記事の最後にはこのように述べている

小説の中にも登場していた言葉である

なかにし礼は、詩人で、作詞家であるのだがいったい彼のどこからあのようなヒットを生み出すような言葉が滲み出てくるのか

小説のなかのニンゲンは紛れもなく人間・なかにし礼であるのだ しかしながら、現実を超過したようなドラマのような展開が続く 人間が叫ぶのは実の声だ 怒りであり嘆きであり 実は遺言であるのだと私は感じた

読書途中でメモした感想には

夢の跡 あなたの書いたその詩集 きらめく言葉の泉のそのむこう そっと隠した涙の跡がそこにある

🌱

なかにし礼「夜の歌」を読んでいますが 憎悪と嫌悪があふれた 全力で綴った自伝であり これは遺言でもあるのだ

と私は書いた

37ページで

この光景をふたたび見せられたら、俺は生きる勇気を失ってしまう ここには、悪意と復讐、暴力と残酷、非常と恐怖、絶望と憎悪しかない

と書く

残酷と危険と人間の愚劣 そんなシーンがひとときも作者の脳裡の片隅からは消え去らない よく頭を沸騰させないままでこの作品を書き続けられたものだと思う もはや、全てを隣のステージにひとまず置いてしまっているのだろうか

しかしながら、これほどまでに壮絶な人間の生き様が

この時代の一齣一齣の中においてどれほどまでに珍しかったのか それとも日常茶飯事だったのか

小説を読めば確かに自明であるのだが なかにし礼は、その確定性については触れていない 自分の魂や霊が死に果てても癒えないからなのだろうという気がする

「想像力を相当に働かせて」となかにし礼が語ったのだが これからの人たちにこれを受け継ぐだけの器量や力がないことが 私の最大の残念な点である

2018年7月 5日 (木曜日)

又吉直樹 劇場

40年も時代が過ぎれば文芸作品を読む状況も変わってくる

作品との出会いがもしも昔のようなものであったとしたらもっと違う感想を書くのかもしれない

作家の顔も生い立ちもプロフィールもそれほど知らずに、たまたま手に取った本の裏表紙にある出版社の作品群のなかから二、三行の概要を参考に面白そうなものを選んだり、新聞の片隅にあった出版案内でタイトルが気に入って買ったりするような出会いだったとしたら、わたしはもっと又吉直樹という作家に、大きな美しい芸術的なロマンを期待するのかもしれない

つまり、かつて遠藤周作や宮本輝や司馬遼太郎に出会ったのと似たような出会いであったら、ファンになれたのかもしれない

現代作家は作品を発表するときからそのようなイメージを読者にもたれ、メディアに騒がれ、各種の賞が味方をされたりあるいは邪魔をされる

できる限り昔風に又吉直樹を読みたいし、読んだ方がきっとこの人の作品を味わえるのだろうと思う

わたしはテレビを見ないので、お笑いのタレントでテレビに出ている人であるということくらいしか知らないだけど、結構それでもそれが邪魔をした

先に読んだ人の感想や、新聞雑誌の評価も邪魔だった

というわけで、ひとことで言えば、ポテンシャルは計り知れないが、面白いセンスを持っていて文学というものをきちんと書いている珍しい現代作家ではないかと感じたのだ

「きちんと書いている」ということは、クソ面白くないような面も受け継がねばならないし、自己陶酔も必要だろう。理屈も詩文も書く

いつまでたっても売れずにいて、いつか売ってやろうというようなハングリーも必要だがこれについては出発点が華やかだっただけに、叶わなかった

わたし好みでなかったというか、気に掛かった点が一つあった。愛を感じる時にもっと激しく揺れ動いてくれてもいいように思ったのだ。これは前作でも感じたことだった。燃えていないような淡々としたところがこの人の味なのだろうか

ポイントを損してるぜというと、それでいいのですと言われそうであるが



又吉直樹 劇場

2018年6月 2日 (土曜日)

津村記久子 君は永遠にそいつらより若い

あまりマイナスの感想は残さないようにしているので
ほとんど書かないことにしよう

もしかして気が変わって
再びこのような作品を手にすることがあったならば
まったく違った感想を抱くこともあるかもしれない

いまは 残念だが 書棚に並んでも後回しにしようという気持ちが出てしまうだろう

ちょうど国木田独歩の朗読をラジオでやってたので耳を傾けた
そのあとに青空文庫でさらさらと独歩を読んでゆくと
この作品には再び戻ってきて読もうという気にはなれなかった

というよりは 国木田独歩の瑞々しさの余韻を濁したくなっかったのだろう

作風が云々と言うつもりもないが トレンディなドラマの映像作品の原作を思い浮かべてしまうので わたしには手に負えなかっただけなのかもしれない


BOOKsから

長谷川櫂 俳句の誕生 津村記久子 君は永遠にそいつらより若い

2018年3月21日 (水曜日)

門井慶喜 銀河鉄道の父

「宮沢賢治を父政次郎の目から描いた異色の」と書評が書き出す。
果たしてそうか。

この作品の一番大切な言葉は、「宮沢賢治」ではなく「銀河鉄道」でもない。
「父」なのだと読後にじーんと来るものを受け止めながら、そう思った。

1986年から40年ほどのあいだの時代を背景にしたフィクションなのか事実なのか境目のない物語だ。宮沢賢治とともに生きた「父」の物語というのが正確ではないか。

何度も時代の年表を照らしながら、この時代背景のなかで人々がどんな暮らしをし何を生きがいにして幸せを求めていたのだろうか、ということを並行して考えながら、この物語の普遍性がもたらす父親の心理とそのなり振りなどを想像した。

父とはこんなものだと冷めて見つめてもよかろう。
しかし、深層はそんな生易しいものではすまされない。

励ますほかの仕事はなかった。励ましたところで賢治はみじんも楽になることはなく、ましてや病状など好転しない。ことばとは、これほどまでに、
(無力か)
永遠のごとき時間ののち、ようやく咳がやむ。(P376)

丁寧に父なるヒトの心と時間の鼓動を捉えている。

的確に、愛情という温かさと父が備える冷たさと、父であるべき冷静さを物語の深層流におきながら、父の視点とその心を着飾らず肩にも力を入れずに、美しく物語にした作品といえる。

宮沢賢治生誕百周年のイベントのときに偶然にも花巻を旅して賢治に出会いながらもそのあとになっても彼の作品をさらりとしか読んでいなかったし、作品自体もそれほど…と思っていた出来の悪い宮沢賢治読者であったわたしであるが、作品には心を洗われた。

子が先に逝くのは今ほどまでには異例でなかったにしろ、紛れもなく自らの無力に冷静に向き合った父の威厳と偉大さと優しさが、宮沢賢治の描く銀河には脈々と流れるのだろう。

(平成30年3月21日記)

門井慶喜 銀河鉄道の父

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