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2019年7月21日 (日曜日)

(語る 人生の贈りもの)関野吉晴 (朝日新聞)から

(語る 人生の贈りもの)関野吉晴

旅や探検の醍醐味は、「気づき」


1 アマゾン通い50年、未完の旅

 旅や探検の醍醐味は、「気づき」。自分が普遍的だと思っていることが、実は他の人にとっては特殊なことだと分かる。そうすると物の見方が変わり、自分が変わることがおもしろいんです。

 エチオピアでは、ヤギやラクダを飼っている人に「もっと増えたらいいですね」と声をかけたら「いや、これを大切に育てるのが私たちの役目です」と言われた。足るを知る人たちなんですね。いま、「好きな言葉を書いて」と言われると、自戒を込めて「ほどほどに」と書いています。


11 こびない7歳、「かっこいいな」

 《グレートジャーニーの旅では、出会いにもこだわった》

 よく旅を布にたとえるのですが、移動を縦糸とすれば、寄り道して人と出会う横糸もなければ布にはならない。僕は横糸のほうが好きなんだけど、道草ばかり食っていると進まなくて、南米を出るまで2年かかりました(笑)。


10 我々は何者?問いながら進む

 旅をしながら「我々はどこから来たのか」とともに「我々は何者なのか」と考え続けました。他の動物とどこが違うんだろう、と。

 牙もなくて爪も鋭くなくて、皮膚も薄く、敏捷(びんしょう)性も劣る。こんなに弱い人間がなぜ生きてこられたのかが不思議でしょうがなかったんです。でも、四つ足の動物から見たら、二本足で立つ人間が大家族やコミュニティーを作り、集団でいると、大きく見えて、その上こん棒でも持っていると襲いにくいんじゃないか。だから弱いながらも生きてきたのだと思うようになりました。


9 太古の人類たどる、44歳の出発

 アマゾンで出会う人たちは、顔立ちが日本人によく似ています。僕は通い続けるうちに「この人たちは、いつごろ、どこから、なぜやって来たのだろう」という思いが募り、人類が世界中に拡散した道のりをたどってみたいという気持ちが強くなっていきました。


7 先住民族の地図、森と川の世界

 日本では電気、水道、ガス……と管につながれて暮らしていて、1本切れるとパニックになるけど、彼らは何にもつながれていない。自然の一部となって生きている。そうすると、自然への畏敬(いけい)の念や感謝が生まれます。目に見えない何かがあり、それを怖(おそ)れながら生きていく。そのほうが人は謙虚になり、自然をコントロールしようなどとは思いません。


6 「トウチャン」一家と付き合って

 《彼らと付き合う中で、先住民族に対する見方が変わった》

 日本でマチゲンガの話をすると、よく「彼らは何を楽しみに生きているんですか」と聞かれるので、同じ質問を返すんです。急には答えられない人が多く、しばらく考えて、「家族が仲良くて元気で、仕事がうまくいって、カラオケで歌ったり本を読んだり」と返ってくる。アマゾンにはカラオケはないけど、歌も楽器も踊りもあり、小説はないけど神話、民話がある。仕事=狩猟、魚取りがうまくいけばうれしい。最初は違いが目に付きますが、付き合ってみると、根本的には一緒だと気づきました。


3 失恋こそ大学時代に

《師にも恵まれた》

 国際私法が専門のあき場準一先生のゼミに入りました。ゼミ生は2人。僕が「あまり法律をやりたくない。文化人類学でアマゾンをやりたいんです」と言ったら、先生は「好きなことをやってもいいけど、やるなら真剣にやれ」と言われました。

 あき場先生の「すぐ役に立つものは、すぐ役に立たなくなる。学生時代は本を読め。友達を作れ。酒を飲めるようになれ。それだけやればいい」との言葉に感銘を受けた。後に武蔵野美術大で教えるようになり、学生時代にやっておくといいこととして「本を読む。友人を作る。恋をする」という言葉を贈ったことがあります。恋というより、失恋しろと言いたい。失恋すると奈落の底に落とされた気分になるけど、勉強になる。失敗って非常に大事なことだと思うんです。失敗すると、必ず反省して真剣に物事を考えるから。


2 渡航自由化「あ、行けるんだ」

でも文化も自然も全く違うところに行けば、自分がよく見えるし、自分が変わるかもしれないと思ったので、入学後しばらくして探検部を作りました


 

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