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2016年1月30日 (土曜日)

高村薫 リヴィエラを撃て(上・下)

季節は冬ばかりだ。
2月とか3月とか。
この国の物語をこの重たさで書こうとすると最も合う季節なのかもしれない。
1月いっぱい、ちょうどそんなふうに同じ季節に読んできた。

リヴィエラを撃て(上・下)

リヴィエラを撃て(上・下)

平成28年1月29日

エスピオナージ。耳慣れない言葉はどこかに記憶があるものの、スパイ小説なんてのはふだんから触れる小説や映画、ドラマでは007くらいしか知らない。(それに私は007の映画は1度も見たことがない)

「愛する者を傷つけないために別れ、愛してくれる者を傷つけいないために愛し、遠ざけ、キムは結局ひとりで逝ったのだ。」

こんな一文が目にとまる。
この言葉と出会うのは、物語として第4コーナー付近に差し掛かるあたりになろうか。
もしかしたら、さり気なく行き過ぎる物語のシーンのなかで、ふっと一息つく瞬間に痺れたのは私だけではなかったのではないか。

人が人を愛するとか何かに情熱を燃やすとか執念を煮え滾らせるとか正義を通すとか、そういう人間味からはまったく無縁にも思えるハードボイルドな側面をオモテにしている物語であるはずだったが、作者の思いは決してそんなにもクールではなかったのだと思う。

そんな想像を絶やさせないような只ならぬ作品だと難解と闘いながらも読み始めれば誰もが感じ取ってしまうだろう。

そして読み進むにつれて、人間の愛情や社会の不条理のようなものに熱いものを滾らせているのではないかと思いはじめるのだった。

登場人物が次々と狙撃されて死んでいってしまう。
これほどまでに非情がどこにあろうか。
死んで欲しくない人がことごとく無残に死んでいく。
しかしながら、タダの殺し合いの小説ではないことくらいは、それも少し読めば直ぐに分かる。

スパイ小説とはどんなものなのかをお手本で知らされたわけではないし、このような作品の経験がない私には最後まで読み切る自信が持てなかった。だが、とても難解な物語であるはずだったのに、未知のジャンルに戸惑いながらもドキドキで読んでいく。どこかしらに最後まで読んでしまう理由と確信があって、それは読み終わってみてはっきりと見えたのだった。

私たちの非日常のテロリストというものが登場する。
スパイがいる半ば非現実の社会で、そこには民族の意識の闘いが潜む。
情報機関が事件の水面下でざわざわと動く。

伊勢志摩サミットの警備のニュースはお茶の間で流れ、身近でも囁かれている。

各国でのテロ事件も騒がしいときに読み始めたこともあって、公安警察や外事警察の物語としてもグッドタイミングでドキドキとして読む。

スコットランドの地名や地形や民族の闘争の背景の資料を探して読んで、読者に求められるスタミナをつけた。
さらに、登場人物リストを大きな紙に書き出して自分なりに関係図を描いてみた。
それでも、何度もページを最初までめくり直す日が続いた。

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