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2014年6月 2日 (月曜日)

池井戸潤 下町ロケット

おもしろい作品だったので大勢の人にオススメしてもいい。悲しくて泣ける作品ではなく、感動的なほうで泣ける作品だった。

このごろ、氾濫するドラマや映画のなかには、ありきたりのストーリーがあふれている。素晴らしい作家さんであろうが売れる作品を書くためなのかスポンサーの顔色伺いなのか自然のチカラなのか、その作家さんの持ち味と作風を生かしきれてないような作品が目立つので、本屋に棚積みになっていても騙されたような気落ちになりたくないという警戒心がどうしても湧いてしまう。

半沢直樹というちょっとブームを呼んだ作品の作者が池井戸潤である。そのことは本を手にとってから知った。知らないと遅れてるとかハズレてるとか思われそうであるが、私は半沢直樹という作品を知らない。新聞記事で流行語の記事を読んで知っているだけだ。しかし、ブームや話題の仲間に入るのは嫌なので、その作家である池井戸潤の作品を読むことには抵抗があって、こっそり読み始めて先入観を崩せなかったら知らん振りして読み始めなかったことにでもしようとも考えた。

一方で、直木賞にハズレなしとヒト様には薦めていることもあって、この作品には大いなる期待が掛かっている。直木賞に、かつてから、ハズレがなかったのは、私自身が気に入りそうな作品なのかどうかを結構念入りに吟味してから読み始めているからであって、今回も安易に飛びつくわけにも行かなかったのだが、テレビで流行語まで作ったドラマの作家さんなのかと思うと、少し暗くなった。

そんな前置きで読み始めたのであったが、文句なく久しぶりにスカッとするいかにもドラマらしい現代的で現代版のドラマであった。◎

和田勉であるとか倉本聰であるとか、または市川森一とか、日曜劇場やたまにやる2時間ドラマや芸術祭参加作品のドラマなどのようなものにハマっていた古い世代の人間ですから、視聴率が上がるとか宣伝を含んでいるとか人気タレントを使っているとかそういうものを、大っぴらになりふり構わず、あからさまにしてしまっている今風のドラマは好きになれない。ドラマの主張を、ひとつの矜持を通すように隠し持って欲しいと思いながら、ベストセラーであってもそこに期待を繋いでいる。

読みながら、このストーリーを前編後編くらいでドラマ仕立てにして、きれいな景色や生きた顔色を撮れるカメラマンやストレートに切れる演技のできる役者さんや人の心の波長とドラマの波長をシンクロできるような音楽を感じることのできる音楽プロデューサーなどが集まれば、直木賞という文学を超えて、映像で感動を呼べるかもしれない、と頭のなかで想像しながら並行して読むことができた。

ロケットのエンジンのバルブの特許をめぐる技術を軸にした人と人がぶつかり合う話で、現実味を幾分帯びさせて、あるわけのないストーリーでありながらも、読み手を引き込んでゆくからおもしろいのだろう。難しいレベルの現実や技術を解説してもいけないし、事実をもとにリアルなドキュメントでもおもしろくないだろう。もちろん、ドキュメントに近いほうが、作り話のバカバカしさがないから好きだという人もありましょうが、この作家のこの作品の場合は、ドラマにしてしまう上手さのようなものがあるのでこの作品風味の方がいい。

ドラマであるのだからそこはハッピーエンド的な結末を安易に想像してしまうのだが、メーカーで研究開発の経験を現実に10年、20年とやってきた私にすれば、嫌な思い出や超リアルな事実が頭をよぎり、本を脇に置いてドラマから離れてしまうこともちょこっとあったが、やっぱしドラマなのだなあと感心させられるほどに上手にストーリーをまとめてくれている。

とりわけキザな、あるいは文学作品のようなメタファー的なところなどは、ほとんどない。そういう点でもシナリオを作文にしたような(悪く言えば味気のない)作品ともいえる。

でも文芸作品が好みの私でも喜んで味わって、もしかしたら他の作品よりテンポ良く読みきってしまったのは、ほかならぬこの人の肌身に染み付いたストーリーテラーとしての求心力であったのではないかと思う。

というわけで、ひとりじめして置くタイプの作品ではなく、皆さんにオススメしたい。

池井戸潤 下町ロケット

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