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2014年3月28日 (金曜日)

宮本輝 慈雨の音 流転の海・第六部

宮本輝 慈雨の音 流転の海・第六部です。

1980年代はじめに「流転の海・第一部」に出会い長いお付き合いです。
来月4月末には、第七部(最終編)がハードカバーで出ます。
(文庫まで読まないつもりでいますが)

登場人物の人間関係もおおかた記憶が曖昧になっているのに
普通ならば面白くなくて投げ出すのだろうけど
何の迷いもなく読了できてしまうのでした。

近頃、少し面白味をなくしているのは売れっ子になってしまったからか歳のせいであるか情熱が減ってきたのか息切れであるのかなどと心配をしていたが、流転の海を書くときは元に戻っていたから安心した。やっぱし少し違うぞという気持ちで読み始める。何もたくさんの秀作を世に残すことなど無い。数少なくてもしっかりとしたものを読みたい。もちろん面白味に欠けると言ってはみても、詰まらない作品や下らない作品、売れればいいという作品を書いているわけではなく、少しお尻に火を着けられて書かされているとかゴーストなお弟子さんが代わりに書いているのではないか(ないと思うが)という作品が多かったような気がしただけだ。読み手である私の方も、熱く燃えていないこともあったのだから、仕方がない。そういう時期もあろう。

さて、この作品は、シリーズの中ではもっぱら大人しいと言われたように、第五部までと比べると激動の物語ではない。シリーズ全体から見ると作品の中でも少し緩やかな部分といえるかもしれない。宮本輝の長編作品の特徴は、息を抜いているような中だるみがあることだと思うが、シリーズの過程にもそういうところがあって、前編や本編はそういう部分なのかもしれない。まあ、物語でもリアルな人生でもそういうものだろうから、それでいいのだと思うが。

第六部は確かに宮本作品の中では大人しい一節になるかも知れないものの、流転の海の作品の中では重要な位置づけであるし、最終編へと向かうための助走のようなものだろう。内容は意味深いものがあって結末を迎えるにあたってとても欠かすことのできないモノが占めているような気がしている。

数々の教訓や哲学を作品の中に散りばめながらしっとりと読者に届けてくれる作品が多いのだが、この第六部では苦しい時代背景のなかで数々の辛い別れを経ながら一人一人が完成されたひとつの姿に向かっているような、それは人生の儚さでもあるのだろうが、宿命でもあり人としての強い姿でもあり弱い一面でもあるところを伝えてくれる。

生き様を、もはや戦後ではないという時代背景に乗せて、作者らしいペンで綴ってゆく。日本の国民がもれなく苦労して生きてきたことを包み隠さず残しておかねばならない。そんな時代に自分たちは大きくなってきたのだし、自分たちを育ててくれた人も年を食っていったのだということをしっかりと記録しておかなくてはならない。物語を書きながら、誰もが書ける自伝ではなく、語り継ぎながらもっと重くて深いものとして伝え遺すのだという魂のようなものを感じることができる。

現代の幸福社会に生きる人たちへ決して苦言であるとか説教じみたものではない形で、噛み潰したときに激しく滲み出てくるような苦味を伝えておく責任がある。それはひとつの作品としておもしろいとかおもしろくないとか人気があるとか売れるとかそのような問題ではなく、遺言のような形で伝えたいと作者はもしかしたら思ったのではないだろうか。自分の使命のようなものと考えて、気合を入れようとしたのかもしれない。

貧しい時代に生まれて貧しい時代を生き延びて、数え切れない苦難を子供に引き継いできた時代の人であっても、そこには自信や自尊があったのだということを伝えなければならない。新しい世代へと過去の様々な歴史を受け継いだ人の責任としてその遺言を物語にしなくてはならない。それはひとりの小説家としての宿命であり感謝でもあった。そんな意気を持っている姿がある。ということは私の推測であり希望でもあり憧れではあるが、長い年月を経ても読み続けている原動力なのかと思う。

流転の海(第一部)と出会ったのは、社会人になりたての1980年代の初めの頃だ。思えば長い付き合いで、次の作品が下降線だったらしばらく間を置いてから読もうと何度も思いながらも、文庫になれば必ず買って読んできた。この不思議な魅力は何処から生まれるのだろう。(友だちに薦めてもきっと途中で投げ出すことが容易に想像出来るだけに、誰にも紹介せずに読み続けている)

宮本輝 慈雨の音

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