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2014年2月15日 (土曜日)

青山七恵 あかりの湖畔

(書き出し)
よく晴れた、夏の初めの午後だった。風がひと吹きするごとに、木々の葉先に溜まった光がしたたって歩道に落ちた。

そんなかんじで始まるのです。実は最後まで読み切る自信がそれほど持てず、どんな物語であるかが気にかかって仕方なかった。「ひとり日和」のときに感じたように、あたたかみのある静かな物語を書く作家さんとは思うのだが、揺さぶるような感情を表に出してこない作風だったような記憶があって、記憶が正しいとも限らないのに尻込みしている。

でも、読んでよかったと思っている。

まず、友だちに、女性向けかもしれませんね、と伝えた。読みだしてから同時進行で頭のなかで考えたのは、他の作家との比較で、キザで洒落た文章を書く(私の好きな)男性の人気作家のようでもなく、本のタイトルや印象から受けとる印象とは正反対の作品でありタッチだなあと思いつつ、その展開に何気なく無意識に引きずられてゆく。活字がないと生きてゆけないという友だちがいたが、そんなおバカさん向けの作品みたいかもしれない。でも、最後まで読んだらそうじゃなかった。

作家は、私の場合、男性が好きらしい。意識しているわけでもないのだろうけれど、揺れ動く激しさを上手に書く人が男性に多いのか、女性を見る男性の視線がフィットして好きなのか、自分でもあまり深くは考えていない。ただ、男性が好きという結果的なこともあって、いかにも女性の柔らかさをまとって芥川賞を経験している作家であることをどうしても意識しながら、恐る恐る読み続ける。でも、これも何も恐れることはなかったのだが。

本の装丁がこの人の人柄を捉えているのか、作品を表しているのか、優しそうな三人の女性の物語であるということが読む前から伝わってくる。素敵な絵だって思われる方も多かろう。

青山七恵さんという方の作家紹介(プロフィール)を拝読しまだお若いことを知り、ストーリーにどれほど厚みが出て、上手に複雑化されて、感動を呼び起こしてくれて、感情を伝えてくれるのだろうかと、先にも書いたようにちょっと疑い深く読んでいきました。

「ひとり日和」(芥川賞)のころよりもずいぶんと大人になられて、落ち着いて書いておられるのが伝わってくる。じっくりと考えて、書き上げるのに磨きをかけている作品となっている。そこに誠意のようなものも感じながら、後半はけっこう一気に読んでしまった。一気に読まない私が読んだという点で◎だったともいえる。

脳みその片隅に倉本聰さんの作品のような美的な情景を浮かべたりしながら読んでしまうのですが、倉本さんには追いつけないところだらけでいいじゃないか。ゆっくりと変化する自然と、幾人もの人々がお互いに触れ合ってときにはぶつかり合って心を擦り合わせながら、そしてすれ違いながら、けっこうリアルっぽい面も保ちつつ、小説なのだからというようなある種の安心感も伴い、物語が展開する。

新聞小説だったという先入観はプラス働いて、かつて宮本輝の海岸列車を読んだときのような揺れて染みこんでくる感情の伝わりも感じ(輝さんの作品ほどに☆付けないけど)第3コーナあたりは、少し下手くそに揺れ動きながらまとまってゆく。

やっぱし、女性の作品なのだなと感じるのは、表紙にも並んでいる3人姉妹の(絵の素晴らしさも絶賛しながら)それぞれの気持ちの表現で、男の私にはわからない所も多いけど、きっとこれがこの人の人柄のもつ優しさなのだろうと思ってしまう。

この人はいつか超一流になるためにはそこから抜けださねばならない。そう思います。この作品のような物語を、あるいはこの作品をドラマで、しかもそれはラジオドラマにあるような空想的で余韻のあるもので味わってみたいと思い浮かべながら、最終章あたりを読んでゆく。

小説とは、何気ないものを、何気なく、それは架空とわかっているのだけれど、愉しませてくれるものであって、毎日少しずつ読んできた人々はとても幸せに浸れたのではないかと想像する。

青山七恵 あかりの時間

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