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2012年10月12日 (金曜日)

秋の夜長に考える その3

秋の夜長に。

季節が秋だったのかどうかは全く記憶にないが、父が寝床で日記を書いていたのを思い出す。

一年中欠かさず書いていただろうから、季節が秋であったというわけではなかろう。しかし、確かに父は枕を胸にして温かい布団にくるまってうつ伏せで書いていた。

子どもの私は大人が書く日記など全く関心もなかったので、枕元に置いてあっても開けもしなかった。母も夫の日記のことなど興味も無かったに違いない。一年分を書ける日記を父は使っていて、小さな字がぎっしりと詰まっていた。

一度だけ何処かのページの、ほんの一節だけ見たことがあった、というか見えてしまったのだ。当然のこと、内容のことは記憶にないが、何か小説のような、あるいは詩文のような文章であったことが微かに印象として残っている。

あの日記は父の死期が迫っているころ、興味のかけらも持たない私の母が、何か部屋の整理整頓の拍子に捨ててしまったと思う。きっと間違いなく、誰にも、父にも、尋ねることもなく焼き捨てたと思う。

父はどういつもりで日記を書いていたのだろう、今の私の気持ちと同じであったのだろうか、もしそうなら、私の書いているこの日記が突然消滅したら……私ならばさぞかし悲しむだろうから、あの人もやり場のない無念を感じたはずだ。

しかし一方で、頭の片隅で焼き捨てられることも予期していたに違いない。日記が焼失したことは誰にも話さず、焼いた人の気持ちをいたわったのかも知れない。

こぼれた水を叱るような人ではなかった。

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