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2011年2月19日 (土曜日)

宮本輝 ここに地終わり海始まる

ゆっくりゆっくり、
15年ぶりに再読しました。

何故私は15年前にこの本を本屋で手にしたのだろう。
出版されて数年が過ぎていたのに。

ふとそう思う。

やはり、数年の波が人生の中には存在して、
ある地点に差し掛かったときに、
このタイトルが私を惹きつけたとしか考えようがない。

だから、
惹きつけられない人には、オススメしなくていいのだろうな。


宮本輝
ここに地終わり海始まる (上・下)

---

人には様々な生き方がありハプニングがあり、成功もあれば失敗もある。

この私でさえ、門真の家電会社の求人応募(転職募集)の葉書を投函するかやめようか迷いながらポケットに入れて出掛けたときに、それがポケットからポロリと落ちたことと、それを拾ってくれた人の助けで葉書が会社に届いてしまって、京都の制御機器会社から転職ということになった過去がある。

あの葉書が私のポケットから知らぬ間にこぼれ落ちなかったら、私を新卒の時から大事にしてくれた京都の会社に私はいたのだろうか。2期後に来て今は常務になったM君のように出世した人もいれば、私のように人生を転げ落ちていまだにスリリングな未熟な技術者の道を歩んでいるお馬鹿さんもいるのだから、ドラマなんてのはその辺に幾らでもあるのだろう。

物語は1枚の宛名の勘違いからひとりの女性が不治の病を克服し社会に跳びだそうとするときに、二人の男性とひとりの親友の女の子と家族やら仕事社会が関わって物語となる。宮本輝が何かの作品で書いていた「糾える縄」のように。

何の変哲もないものといえばそれまでであるが、冒頭に登場するポルトガルのロカ岬の与えるインパクトが目茶目茶大きい。
岬の様子はほとんど思い浮かぶほども書かれていないし、実際に誰かがそこに降り立ったというシーンもない。ユーラシア大陸の最果てにある岬というだけで、読者を固く惹きつけてしまって、最後まで放さない。
大陸が海に落ちても大西洋を隔てればまた新しい大陸に出会うのだから、何もそれほど感動的でもないのだと、冷めたことも言えるのだけれども、しかしながら、作品のタイトルが詩的に読者の心を離さない。

人間は誰でも危なくて不安なものを持ちながらも、それをひとつの幸せというもので包み込み、心はそれに守られて、そこに自信と誇りを持って一歩一歩ゆくのだ。ときには裏切りもあれば競争もある。嘘もあれば誠意もある。

しかし、この物語の根底に流れるのは、人の心の清らかさと真面目さと自分を見つめる優しい眼差しだった。悲しみも失望も、悪も卑怯もなく、少し変わってはいるもののありきたりの生き方のバイブルのような人の心を物語にしたのだ。

ロカ岬というユートピアの魔力に釣られて、どんな時も、いつかはそこに立って勇気を胸にするのだと願う読者は、物語の主人公と自分自身とを併走させながら、勇気と元気を自分へ吹き込もうとしている。

宮本輝という人がこの作品を書いた時期は、1990年3月から1990年11月までで、年齢的にも一番面白い作品の書けるとき、不惑を2、3年過ぎたときだった。
流転の海に着手し、海岸列車を、海辺の扉を書き終えて、花の降る午後で物語を愉しむことを試したあとだった。

ところどころに、初期のころに持ち合わせた独特の筆が出てきて、15年ぶりに再読していると嬉しくなった。もう一度、短編に集中すると甦るものがあるかもしれない。

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