本多勝一著 戦場の村
本多勝一著 戦場の村(朝日新聞社)
どうしても書いておきたい1冊を何にしようか。散々迷ってその挙句に、私はこの本を手に取りました。ここに書く最後の書物としてどの本を取り上げるか。今まであてもなく書きながらも、そんなことを常に思い続けていました。それを探りながら何冊かを取り上げ、どうやって締めくくろうかと思っていましたが。考えるのをやめました。
本多勝一の「貧困なる精神」と「極限の民族」が私の読書人生に大きな刺激を与えたことは間違いない。しかし、そんなことでセンチにもなってもおれないですよ。私の本棚の中の、奥まった所に静かに収まっていながら、椅子に腰掛けてじっと棚を見上げると必ず目にとまる1冊ですし、この本を最後にしてしまおうかと、さっき決めました。
何を今更。
近年の芥川賞の文学性を決して否定をするようなことはしたくないし、このルポルタージュとそれらの文学作品を比較することなどにも論理的に矛盾があるのは承知ですが、それでも書きたい。
おい!文学(ブンガク)、それでいいのか!
私の中では、遠藤周作の重いテーマ、松本清張の描く社会、司馬遼太郎の紐解く史観、いわゆる戦後文学といわれるものの時代背景、山頭火の虚空、北山修の視線、本多氏のルポルタージュが伝えるもの・・・などなど。それらが攪拌されて、私自身の人生に刺激を与え続けてくれました。
こうしてここで様々な本を書きなぐるために本棚を見上げる夜があったことは幸せなことでした。
さて、過去に拘るのは決して格好悪いことではないと思いながらも、もう少し書いてもいいかも…と思います。
時々刻々。
そうです。その言葉の通りなんですよ。過去を評価しはじめたら歩む足が止まってしまう。新しい本棚を今の本棚の前に設置する隙間を空けよう。さあ、部屋を片付け始めることにします。
みなさん、ありがとうございました。
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昭和43年4月10日第1版。
朝日新聞社から文庫本でも出版されています。
| 2005-06-13 08:24 | 読書系セレクション |
【原民喜】の遺書から
「戦場の村」を書いて最後にしようと思っていましたが、尻切れトンボなので「原民喜」さんに代筆をお願いしました。
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遺書
ながい間、いろいろ親切にして頂いたことを嬉しく思います。僕はいま誰とも、さりげなく別れてゆきたいのです。妻と死に別れてから後の僕の作品は、その殆どすべてが、それぞれ遺書だったような気がします。
<原民喜>
| 2005-06-23 11:26 | 読書系セレクション |
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