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2010年10月20日 (水曜日)

福永武彦 死の島(上・下)  その3


福永武彦 死の島 (その3)


その2につづき その3

さまざまな感想があるようですが、それらを読んで、文学者というのはオモシロイ人たちだな、という感想のほうが先に出てきてしまいます。いきなり失礼なことを書き出して、文学(ブンガク)のご専門の方々を不愉快にさせてしまったかもしれません。

まったくの文学は専門外で、社会人になってからも悲しきかな三角関数や代数幾何学、微分積分とか、こういう無機質なものとお付き合いをしていながら、小説とか文学作品に遊んでもらって暮らしてきました。

だから、ブンガクのみなさんが、ブンガク作品を、また熱烈な読書家の方(や可哀想に読書中毒になった方々も)、作品のことをやいやいと理屈付けておられるのを読むたびに、一般的表現で言うと「引いて」しまうわけです。

これらの遠因は、高い教養レベルを実現し多くの知的文化人を育成しようとする現代教育の賜物なのでしょうか、ブンガクとか読後感想をひとつの囲いに包んでしまって近づきがたいものにしてしまった感もあります。

もしかしたら、福永武彦が読者に投げつけたかったものは、そういう一面性をもった読者たちへ向けたものでもあったのかもしれませんが、私は言葉の遊びの感覚を少し発展して変形させくらいに捉えて、誰にも読まれないかもしれない詩集を福永武彦がひとりで長篇に編み上げ直しただけのようにも思えてきて、これは彼の自己満足の集大成なのではないか、とさえ思うのです。

しかしながら、作品としては、誰もが★五つも進呈するほどのものにふさわしく、どの数行であっても読者を魅了する。いや、私は魅了されたのではなく、一種の催眠術にかかったように取り付かれてしまうのでした。他のどんな作家にもない不思議な力で、惹かれ過ぎて疲れると池澤夏樹のカデナを読んでいたり、宮本輝をぱらぱらと見ていたりするのです。別に死の島なんて最後まで読まなくてもええわと思いながらも、何ヶ月も掛かって読み終わってしまったわけです。

良質のフルコース料理を戴いているような感動。これはこの作品を読んで共感できる人にしかわからないものでしょう。絶版になってしまっているのは、単に読者が減っているというだけのものでもないと思いますが、TVでいうなら視聴率狙いのようなばかげた作品を賛美する時代だからこそ、こういうバランスの取れた、作品をまだ知らない人にささげたい。
 
| 2010-03-10 10:51 | 読書系セレクション |

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