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2010年8月 7日 (土曜日)

いつも空を見ていた 4


秋に、笑顔で

真夏に別れてきたあの人と、深まる秋に、もう一度だけ「さようなら」をいう機会があった。

肌に纏わりつく陽射しは、もはや、皮膚から腕の芯まで突き刺さってくるほど強くはなく、秋という季節に変わって、優しく冷たく柔らかく私を包んでいてくれた。その優しさが身体じゅうの背中から腰までを異様に温めてくれて、妙なほどに私は素直で無口になっていた。

もしも、「さようなら」を言うときに、熱くもう一度抱きしめてやれるなら、言葉を忘れてしまったように語れなくなったに違いない。頭の中で「やっぱり好きだ」と嘘をつこうとするけど、金縛りにあったようになっていったのかもしれない。もしも、その心をストレートに大声で叫んだとしても、あのときは許されたのかもしれない。

あの人が好きだったもの、その食べ物や映画、音楽などなど、何ひとつ思い出してあげることもできないまま、ただ目の前にある同じ景色を見つめながら、
「この写真、返すわ。夏に撮ったやつよ」
と、か弱くいいすてて二枚の写真を渡した。

誰かに見られないように肩と肩が軽く触れ合うほどに寄り添い、背中のほうから腕を回して抱き合うように寄り添い、あの人の手にしっかりと握らせた。

あの人の声が小さく何かを呟く。なんて言ったのだろう。

もう好きになんかなれないよ…だったら救われる。
もう絶対に会わないから…だったら、哀しい。
また会えるかも…だったら、どうしてそんな優しい人と別れなければならないのと悔やんだのかもしれない。

真相は、わからない。あの人の心の奥を何ひとつ知らなかったのだから、私は、別れる宿命にあったのだろう。

朝陽はすでに首を傾げねばならない高さまで昇り始めていた。
あの人が私から離れてゆく。
消えてゆく。

これまで、どこで「さようなら」をしてもいつも必ず雨がつきものだったのに、あの日はやけに眩しいばかりの秋の空だった。鳥も飛んでいない。飛行機雲も、白い綿のような雲もない。

「じゃあ」と言った。
あれが最後に見たあの人の顔だった。
笑顔だった。

つづく

| 2006-09-16 17:34 | 鳥のひろちゃん


枯葉の舞うころ

笑顔だった。
あの子はいつも笑顔だった。そんな記憶ばかりが残る。

---

初めて出会った日に二人並んで高台から琵琶湖を見下ろした。青く透きとおる湖面の鏡のような静けさと、新緑の山肌の湧き出るような躍動感を、二人でじっと見つめていた。あのときあの子は何を考えていたのだろうか。

震えるように私はベンチに座った。「もっとそばにおいでよ、もっと…」と声を掛けてくれたことが、麻薬のように私の震えを止めてくれたのだった。

---

秋に、別れた。
琵琶湖の、あのときとは反対岸の、水際の公園だった。
朝日が比叡の山々を照らし、静かな凪の湖面を背に、手を振って別れたのだ。
あの後、あの子は、どうしたのだろうか。

---

彼女のアパートから少し歩いたところに大きなケヤキの並木道があった。
秋も深まり、街路樹が色づくころに、ふと、あの子を思い出した。
スーパーまで肩を並べて歩いたあのケヤキの並木には、さらさらと落葉が音を立てて風に吹かれているのだろうか。

そんなことを思ってセンチになっているときに、メールが飛び込んできたのだった。

(続く)

| 2006-11-24 22:35 | 鳥のひろちゃん


冬枯れの道…

プラタナスの枯葉舞う冬の道で
プラタナスの散る音に振り返る
帰っておいでよと
振り返っても
そこにはただ風が
吹いているだけ

果たして、プラタナスの葉が風に舞い上がるのは冬なのだろうか。北山修が綴ったような風景は11月から12月に掛けての、寂しい季節ではないか。それを彼は冬と呼んだのか。それとも、冬にはプラタナスの樹に葉などなく、したがって舞うことはありえないけど、寒くて悲しい冬に枯れ葉が舞う風景を彼は思い浮かべたのだろうか。

真っ赤に紅葉して有終の美を飾るように赤く燃えて散りゆく紅葉や、風の音にも揺すられることなく静かにゆらゆらと舞い落ちる銀杏は、師走のざわめきが来る前に自らが絶えてゆく。

北山修はそのことを知っていながら、プラタナスの大きな黄色い葉が舞う静かな時間を「冬の道」の向こうに思い浮かべてうたったのかもしれない。

----

私は、ひろちゃんからのメールを何度も読んだ。そして、アパートの近くの街路樹がさぞかし綺麗に紅葉しているのだろうと想像した。

夏がきて、夏が終わって、私たちは昔からの知り合いのように戻ってゆく。

メールの返事を書く。「おはよう」というメールを送って、「おはよう」という返事を読む。それだけの日々が過ぎてゆく。

枯れ葉の舞うあの街へもう一度行ってみたい、と切々と思いながら、それを自らで拒否して深まる秋を送るのだった。すべては秋の、笑顔で別れたときにすでに終わっていたのだ。


恋人というものに別れなど有り得ないと信じていた。どうして一度好きになった人を嫌いになれるものか。人はそう簡単に好きなものを、理屈で嫌いになれるわけがない。あの子が私から遠ざかってゆくことなど想像もできなかったのだ。

だが、別れという言葉の意味を本当に私は理解していなかった…。

(続く)

| 2006-12-04 22:34 | 鳥のひろちゃん


あのとき、雪

風のない静かな一日でした。

朝、一面の霜が路地裏を覆いつくしたものの、昼過ぎには明るい日が差し始め、窓越しに見るビルや民家の屋根瓦が温温としているように見えました。でも、ガラスの向こうは予想以上に冷たかったようです。

午後3時を回るとビルの影が街を包み始め、雲行きが怪しくなってきました。雪が降り始めたのは7時ころだったでしょうか。

あの人のいる都会は私の住むところよりも遥か400キロも東へ行ったところです。お天気がどうなっているか、咄嗟には想像できませんでしたが、大きな寒波が日本列島をすっぽり覆いつくしているのだとしたら、彼女がアパートまでひとりで帰る夜道は雪になってしまう。

きっと、傘を持たずに家を出たに違いない。
冷たく髪を濡らすボタン雪から逃げるようにあのケヤキの道を駆けている姿を私は思い浮かべました。思えば思うほど痛ましい。

雪は瞬く間に屋根やブロック塀、それに生垣の山茶花も真っ白にしてゆきます。そんな景色を見ながら私はメールを打ちました。

「雪ですね、濡れていまいか心配です。帰ったら暖かいお風呂に入ってね」

しばらくしたら返事が届きます。
「コケタ。スベッタ」

ああ、なんて不運なんだろう。私がメールを送らなければ彼女の身にそんな不幸など来なかったのかもしれない。

私たち、出逢わなければお互いに幸せだったのかもしれなかったのに…。そう悔やんだ日々があったのと重ね合わせて、自分の出したメールを私は悔やみました。

しんしんと積もる雪の中へと出てゆき自らを苛めてやりたいという衝動に私は駆られました。

そのとき、それまで息をひそめていた北風が少しずつ荒ぶりだし、窓ガラスを揺らし始めました。

続く

| 2006-12-13 21:16 | 鳥のひろちゃん


冬至の朝に

そう、あれは冬至の朝で、一面に降りた霜が朝日に融けだしてキラキラと光り輝いていたのでした。

太平洋を渡ってくる真っ赤な光線は海から陸へと上がるところで飛び跳ねている様にも思え、日本で最大級という造船所の大型クレーンは燃えているように浮き上がっていました。


そのとき僕は、そばかすだらけのキミの顔を思い浮かべました。春から秋に共に旅をしたキミでしたが、会えなくなったからといって忘れたりはしないよ。髪型が変わって、お化粧も少し変えてしまったかもしれないけど、だからといって、飛んでいってすぐに会いたいとも思わなかったんだ。

新緑が放つ吐息をいっぱい感じながら柳の木の下でキミに出会って、今はこうして遠く離れた町に住んでいる。そして、もうこれからも絶対に再会できないという予感も持っている。いつかきっと、誰かにキミを奪われてしまう日がくるのだろうけど、キミはいつまでも僕の友だちなんだと思っている。大丈夫という安心感のようなものを感じていたんだ。


寒いね。そんなメールを送る。
バイクに乗ってるかい?と聞いてみる。

僕たち、お互いに何も知らないままで、別れてしまったんだ。
だから、喧嘩をしても、怒りを言葉にできないままで、キョトンとしているしかなかったんだね。

つづく

| 2006-12-23 18:43 | 鳥のひろちゃん


北風が飛行機雲を吹き飛ばし

今朝は霜が降りて、田畑が一面真っ白になっていました。車のガラスも凍り付きました。

でも近頃は、舗装道路が多くなって水たまりが姿を消し、小川の土手がきれいにコンクリート化されてしまって、氷が張っているところを見つけたり、それを拾い上げて道にぶちまけたりして遊んでいる子どもの姿を見掛けなくなりました。

子どもたちはまっすぐに一列に並んで通学路を歩いていきます。道草を喰うこともしないで、きゃんきゃんとはしゃごうともせずに歩いている。軍隊の行軍みたい。

本当のゆとりってのは、受験勉強に集中するために無駄と思える科目を省略して受験の余裕を見せることではないし、事故に遭遇しないようによそ見をしないで隊列を組んで歩きいち早く学校に着いて勉強の支度をすることでもなかったはずだ。

受験に関係ない科目に好奇心を抱いて成績なんか気にせず勉強することが楽しかったし、登下校の途中にあぜ道を駆け下りて水辺の生き物を捕まえたり、氷を割ってみたりして遊ぶことが普通の子どもの遊びだったはずだ。
土手にスイセンが咲いてもふきのとうが芽を出しても、今のままじゃ知らないままで終わってしまう。

そんなことを考えながら、ぼんやりと車を走らせていると、真っ白な霜の田畑がやがて朝日を浴びて、麦の緑がキラキラと光り始めた。

-----
  -----

八朔(ハッサク)がたわわに実をつけて、霜に覆われた畑の真ん中にぽつんとありました。ひろちゃんは、八朔が大好きだと僕に教えてくれたけど、僕は一度も彼女にプレゼントをしなかったな。

冬の間はじっとして、コタツでみかんを食べるのが楽しいのだといつも言っていた。暖かくなったら温泉巡りに行くんだと話すことが、彼女がつぶやいた数少ない夢だったのかもしれない。

----

ある日、
「ねえ、日向のタンポポと日陰のタンポポの話を知ってる?」
とひろちゃんが私に言うので、
「何よそれ」
と尋ねると、
「タンポポには日向で生まれた奴と日陰で生まれた奴がいるんだよ。日向のタンポポはいつもいっぱいのお日様の光を受けて幸せに育つんだけど、日陰のタンポポは一生日が当たらないんだ。でもね。日陰のタンポポは日向のことを一生知らないんだから、それはそれでいいのよ。日陰でも幸せに暮らしているんだ」
と教えてくれた。

きっと彼女は自分が日陰のタンポポなんだと言いたかったのだろう。でも、きっと今頃は花畑のある小さな家で、チューリップの球根が芽を出すのを毎日楽しみにしているような気がする。

----

朝は寒かったけど、ガラスを通して日が当たるこちら側は、昼間になるとポカポカと暖かいのです。

私のデスクからは天窓を通して空が見える。その窓はサンタさんがやっと入れるほどの小さな窓で、晴れた日にはいつもガラスの向こうに白い雲と青い空を切り絵のようにくっきりと見せてくれるのです。

この小さい窓枠から見上げる青空もあれば、今すぐ外に出て100メートルも駆けてゆけば広がる海の、でっかい干潟の上に広がる青空も私の青空だ。

ふと、そんなことを思い浮かべてたあと、ひろちゃんは元気かなと思いました。

つづく

| 2007-01-10 21:37 | 鳥のひろちゃん |


卒業写真

卒業写真という音楽が流れてきた。NHKラジオのアナウンサーが誰かの投書を読んでいる。

3月末。過去を振り返る人、未来を見つめる人、別れを惜しむ人…様々だ。みんな歓喜に満ちている。

僕の卒業アルバム。そう、どこかにしまったまま、引越しを繰り返し、今では行方不明になってしまった。

---
               ---
昔、あの子の部屋を訪ねたときに、滅多に自分のことなど話そうとしないあの子が何故か、卒業アルバムを出してきて、高校時代の自分を見せてくれたことがあった。青春の一駒一駒を話してくれたあの子がいた。

あの子のあの部屋。

とりわけ輝いていたわけでもなかった。普通の学生時代だったのに、それをどうして僕に話そうとしたのだろうか。何かを聞いて欲しかったのだろうか。

あの子が精一杯に羽を広げて、自分の姿を元気で明るく大きく美しく愉快だったのだと見せようとしていることに、あのとき、僕は気づいてあげられなかった。何も気づかずにいたのだった。

---
               ---
しばらくあとになって、二人で旅をした僕たちの間で会話を振り返ってみると、あの子は僕に何かを訴えたかったのかもしれないと思えてくる。

つづく

| 2007-03-21 12:00 | 鳥のひろちゃん |

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