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2010年8月 7日 (土曜日)

いつも空を見ていた 3


あの夏、のこと

(栄村と津南町)

ひとりで来るその人を、長野県栄村の道の駅で私は待った。午後2時の約束だった。
そこは長野市からしばらく信濃川に沿って下ったところにある。もう数分走れば新潟県という場所だった。

私は鬼無里から戸隠を経てここまでやってきたが、あの人はどの方角からやってくるかもわからない。いや、もしかしたらやって来ないかもしれない。
何も知らされていなかった。彼女のことは、名前と住んでいる街を知っているだけで、他は何も知らなかった。

ひと月ほど前、木曽山中の真っ暗な茂みに寝転がって手の届くような星空を見上げながら、夜をともにした人。
とにかく栄村の道の駅で落ち合いましょう、と申し合わせて、東北方面へと旅をともにすることになったのだ。

約束の時刻がどんどんと過ぎて、3時を回っても彼女は現れなかった。暗闇で抱きしめたときの、猫の背中のような彼女の背中の柔らかさを思い出しながら、来ないのかもしれない…と一瞬思った。

つづく

| 2006-01-16 20:50 | 鳥のひろちゃん


あの夏、のこと ─ 転倒 

私の周囲からは全ての音が消え去ってしまってゆく。

約束の時刻になってもやってこないのはきっと何か異変があったに違いない。そう考えると想像は良からぬ方向に崩れるように広がる。

私が教えた奥志賀スーパー林道に行っているのではないだろうか。興味を持つと自分を見失うほどに夢中になる性格だから、無謀であることも気づかずに奥志賀を走り抜けてここまでやって来ようと考えているのではないか。

奥志賀林道は、一部にまだ未舗装が残っているし、距離も長い。それなりに経験を積んだ人でも2時間ほど林道を走り続ければ、緊張が緩む瞬間だってあるはずだ。無茶をしていなければよいが、と思った。人っ子ひとり、居ないかもしれない林道で転倒したりしてはいないだろうか。

時間がコツコツと過ぎる。道の駅に立ち寄る旅人たちや露店のおばちゃんたちの話し声さえ、もはや気に止まることはなく、湯沢温泉のほうからやってくるバイクの姿だけを私は必死で見つめていた。

あの人はいつも、優駿に跨り颯爽と野を駆ける騎士のようにバイクを走らせた。その姿が私の瞼に焼き付いていたので、黒い革のズボンをはき、赤いジャケットを纏って、背筋を伸ばした1台のバイクが向こうからやってくるのが見えたときは、腰が抜けるほどホッとした。

いち早く私を見つけ、メットを脱ぎ、そばかすだらけの真っ白な顔をクシャクシャにして駆け寄って、「山の中のカーブで転んだの・・・」と言った途端に、身体じゅうの力が抜けるように私に倒れこんで泣き出してしまった。

つづく

| 2006-01-31 18:54 | 鳥のひろちゃん


あの夏、のこと ─ さあ、旅を続けよう 

子どもが何かに怯えるように、しゃくりあげて泣いた。しばらくそのまま、私は背中をさするだけしかできなかった。

ひとしきり泣き終ったら、子猫が甘えるような目で見上げて、
「元気が少し戻ったよ」
という。さぞかし心細かったに違いない。言葉が浮かばないのが辛かった。

信濃川は悠々と流れる。
国道のこちら岸からあちらまで、何十メートルあるのだろうか。河口は遥か先だというのに、満ち溢れんばかりの水をためて、悠然と力強く流れてゆく。この川を下れば佐渡の見える海まで辿り着く。

私たちの旅にあてはなかったものの、川の流れの中で何処からともなく巻き上がっている対流のようなものを眺めていると、明日の旅、そして明後日へと元気が湧いてくるのがわかった。同じ勢いをただ見つめるという単純なことで、二人は同じ明日を描いている。その確信と安心感がこの上なく大きい。

その子は、
「どこまで行く?二人だけの旅だけど」
「行けるとこまで行くさ、、、、文字村まで行けるかな、行ってみたいね」
「じゃあ、その前に、この川の河口あたりにある良寛さまのゆかりの地に寄ってもいい?」

そうだ、いつか昔に話をしてくれた、、、貞心尼のことを思い出した。
この子には貞心尼の生きかたに何かを求めようとしているのだった。

続く

| 2006-03-15 21:46 | 鳥のひろちゃん


あの夏、のこと ─ 森立峠

この日の夜は六日町のキャンプ場で過ごした。夜中に通り雨がぱらぱらとしたものの、静かな静かな夜だった。私は、この子の怖さと優しさを知りながら旅を続ける自分の優柔不断さが嫌だった。でも、夜が明ければ、ややこしい考えごとはまた次の夜まで先送りすることにしてしまう自分が居る。そのことをふと思うと震えるように胸がどきどきすることがあった。

さあ、旅を続けよう。

JR只見線は、小出町から六十里峠という国境を越して会津若松市に向かう。六十里という名のとおり歩いて越えれば丸二日は掛かることになる険しい街道だった。

入広瀬村というところに道路工事の案内が出ており、会津若松にはゆけないと書かれていたのを見つけて、私たちは三条市の方へとルート変更をした。石峠という小さな峠を越え、栃尾市に行き、人面峠を越えて村松町から新津市へと走れば山形県もすぐそこだと考えた。

しかし、最初の石峠が工事中だった。
「人生、楽があれば苦もあるが、僕らは通行止めばっかしやな。二人を待っているのは苦難の人生かね」と、決して笑い飛ばせない冗談を言いあい、石峠が目前の道路脇で寝そべったり花を摘んだりして、長くてのんびりした休憩を取った。

石峠の迂回路は大平峠という。ここを走りながら、私は良寛と貞心尼のことを考えつづけた。
この峠を越えて川沿いにしばらく下れば枝道として森立峠がある。そこを越えようか、どうしようか。越えれば昨日から眺めている信濃川沿いに戻る。そしてそこをしばらく下ると良寛ゆかりの与板町に行けるのだ。

バックミラーには、子どものように無心で、丸く可愛い顔のひろちゃんが写っている。私がミラーを覗き込むのを薄々に感じながら、幾らか微笑むことがあるように私には思えた。

「私たち、二人、逃げ切るんだよ」
冷たく平気でそう言い切る彼女の怖さが一瞬、私を襲ったような気がして、この道を下ったら北へ急ごう、森立峠はいつか将来の旅のときに来よう、と決心したのでした。

つづく

| 2006-05-04 15:04 | 鳥のひろちゃん


冷たい雨

【号外】きょうの日記から

---

早春に雨が降っても、
ちっとも、冷たいと思わなかったのに、
今ごろ、シトシトと雨が降ると、
「冷たい雨」だなと思う。

そう、アイツのアパートに転がり込んだあの日も
「冷たい雨」が降っていたのだ。

つづく

| 2006-05-13 08:32 | 鳥のひろちゃん


あの夏、のこと ─ 阿賀川 1 

6月のいつか、ある日に、あの人のアパートまで逃げ込んで夜通しで話をしたことがあった。逢えない不満が募ってるせいか、触れ合う時間を惜しまずに過ごした。

あの日は大雨が都会を襲撃していた。夕食の買い物をしに近所に出かけたときにびしょ濡れになってしまった二人は、使い切ってしまわねばならない灯油の残りを焚きながら、ぬれた服を脱ぎ棄てて裸のままでカーテンも閉めずに過ごしたのだった。

あの夜も、
「逃げようよ、遠くの町に。新しい生活ができるよ」
と、そんな話をしたのかもしれない。


私たち二人の乱れた歩調は、乱れたまま夏を迎えて、人生という大きな塔のどこかしらが少しずつ軋み始めていたのだ。

怖くなる。
このオンナが途轍もなく怖い。

可愛く見える。
とろけるように可愛い。

そんな思いを胸に、旅は続く。

新潟県から山形県へと、県境の道しるべを確認したあたりで、道ばたにラーメン屋を見つけて昼食を取った。食事の時刻はとうに過ぎていた。

つづく

| 2006-05-25 12:29 | 鳥のひろちゃん


あの夏、のこと ─ 阿賀川 2 

ときどき、眩しいものを見つめるような眼差しで、ちょいとうつむき加減に私のほうへ顔を向ける。何を考えているのだろうか。「逃げよう」なんて言い出すオンナ。

「私の周りにもたくさんいるよ。旦那さんなんかいてもいいんだ。好きなんだから、棄てて一緒になるんだよ」
三流の恋愛ドラマではないのだ、と私は、無言で自分に言い聞かせている。二十七歳になった女が、四十を越したオトコに、こんな荒っぽい言葉を投げ掛け続けてくるのだ。


喜多方に到達するまで空腹を我慢できなかった私たちは、道ばたの食堂でラーメンをすすりながらどんな話をしたのだろうか。愛しているとか好きなんだという月並みな言葉を互いに交わしあったことなどは一度もなかったに違いない。

初めて出会ったときからここまでやってくる場面までの筋書きが、あたかもずっと昔から出来上がっていたかのように、劇的でドラマのような旅だった。恋人同志なら誰だって知ってることを、私たちは尋ね合うこともなく、いったい何を二人の依りどころとして見つめあい、抱き合い、触れ合ってきたのか。


私はみちのくに踏み込んでしまっている。その空間の中で、頼る術のない恐怖が私に纏わり着いてくるような気がする。

棲み家が遠ざかってゆくに連れて、このオンナといったいどこまで行ってそのあとどうなるんだという不安と、この子の向こう見ずな勢いと、この子が持って生まれてきた生き抜こうとする動物的な執念のようなものとが、私をビクビクさせた。私は迷っていた。

遊びじゃないけど、終わりにしなければ、二人ともが不幸になるかもしれない。いや、そうはっきりと思ったわけではなかったのだが、私はそう胸に秘めながら苦しんでいた。


阿賀川には漕艇の練習場があった。ボートを漕ぐ若者がなぜか羨ましく見えた。あの子の青春時代の話を聞かされた夜のことが甦った。あのとき、こんな弱い子なんだから私が救ってやろう、と思ったことは確かだ。バックミラーに写る彼女の笑顔はその昔から全然変わらないけど、別れなくてはならないのだ。


いったい、あの子の何が、どこが、怖いのだろうか。その答えを胸のうちで言葉にしないまま自問自答が続く。

大空を悠々と飛ぶ鳥のような清清しさと、獲物を発見して急降下する素早さのような素振りと、ひとりで夕焼けに背を向けて森を見つめる姿が、ガラガラと私の記憶の中で掻き混ざる。

あの子には、嫉妬心というものがあるのだろうか。そういう情念を持たずに、後先も考えずに、私を奪ってしまおうとしていないだろうか。

つづく

| 2006-06-07 22:07 | 鳥のひろちゃん


あの夏、のこと ─ 阿賀川 3 

信号待ちがまったくない道路が続いている。ときには赤信号で止まって、横に並んで顔を向かい合わせて見つめてみたい。バックミラーを頻繁に見やりながら想像を膨らませることのほかに、対話ができない時間のなかで、今度止まったらあの話をしようこの話をしようと、次々と想いが募ってゆく。

その募る想いのフラッシュの隙間に、ひとつの事件の場面が絡んでくる。


好きなオンナができてこれまでの生活ではなく新しい生活を考えている、と或る日、妻にポロリと言ってしまったのだ。妻を愛している故に、どんなことでも相談をする間柄であって恋の悩みも打ち明けてしまう、という愚かな側面を私は持っていたのだ。

のちに、うちのんは、「貴方は別れが下手な人や、私と別れることもあの女と別れることも下手やった」と言う。あのときも今もこの世の誰よりも妻を愛しているので、私はこのようなことが書けるのだと感謝している。
さて、
そのオンナを私は愛している錯覚に陥っていたのだ。好きで好きで仕方がないうえに、この子には私がいてあげねばならない、と強く思っていた。確かに自分の心に偽りはなかったのだが。

梅雨が明ける前の蒸し暑い夜のことだった。
あのころの私はもう言葉を吐き尽くしていた。

ぐっすりと眠り入っていた私の枕元に、ヘルメットを被った男性が来て、
「起きてください」
と声を掛ける。
「奥様は救急車に乗っていただきました」
「ええっ、(何が起こったの)」
「お薬をたくさん飲まれたようです。119番をもらって駆けつけて、いま、車に移動させました。ご主人はどうしますか?」

あの夜の、
極めて強く、冷たく、そして微動もせずに私を睨んだ救急隊員の視線が脳裏に甦る。


甘い妄想なんか抱いている場合じゃないんだ。オマエはオンナと別れるために旅に来たのではないのか。
磐越自動車道路のインターの工事現場が間近に見えている交差点を左に曲がって阿賀川が見えるあたりまで来て、私はバイクを道端に停止させた。

つづく

| 2006-06-22 20:39 | 鳥のひろちゃん


あの夏、のこと ─ あの橋の向こうへ 1 

別れのときが来た。

ミラーに写るあの子の姿を見て、もうこれ以上走り続けることなどできない、と私は悟った。
さっき、ひまわり畑の脇を走り抜けてきた。でも、そんなドラマのような素敵な場所では止まれなかった。

好きだから連れ去って、遥か遠くまで行ってしまいたい私の本当の心と、やっぱしこの子を幸せにする自信のない弱くて不安に満ちた心の葛藤だ。私のなかにある善人と悪人が格闘をしている。

「何を尻込みしているのか」
「きっと、(キミは)、いい人に巡り合えるよ。若くて素敵な人だよ」
「僕は無力だったよ。幸せになるためには、ここでひとまず休もう」
「言い訳なんかやめろよ」

「キミのことは、僕が幸せにするよ」
私は嘘つきだったのだろうか。

「十年後のきょうも、ここでこうして夜空を見上げているかもね」
そう呟いたあと、君と語りあった君と僕との夢は、いつまでたっても忘れない。

数々の言葉が次々と、浮かんでは消えてゆく。


初夏の京都で出会って、3か月という短い間に二人で信州をくまなく走りまわってきた。
林檎の花が咲き、やがて青い実がなった。街道にはムクゲの花が天に向かって伸びていた。

「ひろちゃん、ムクゲの花が好きなんだよ」
あの子は自分のことをひろちゃんと呼んだ。


私の後ろにバイクを止めて、彼女はハンカチで汗を拭いた。そのハンカチには南アメリカ大陸の有名な遺跡にあるような大きい鳥の絵が描いてあった。

大空を悠然と飛ぶ鳥。獲物を見つけて急降下する鳥。
そう、ナウシカが風を切って降下してゆく姿のようでもあった。

「これ、ひろちゃんにピッタリのイメージだね」
「うん、そうだろ。鳥のひろちゃんなんだよ、私は」

「僕たち、このままだとセックスフレンドになってしまう・・・・」

これがあの夏の最後の言葉だった。
僕が君を愛する心と、あの星空で語った夢に嘘はひとつもなかった。
でも、そう伝える前に、君は私に背を向けてしまったのだ。

(続)

| 2006-07-06 21:40 | 鳥のひろちゃん


あの夏、のこと ─ あの橋の向こうへ 2 

私は旅を続けねばならない。

N極の磁石にN極を近づけると反発して後ろに下がるのと同じように、私が話し掛けるために近づくと彼女は後ずさりをした。いっこうに話が進まなくなってしまっている。

いよいよ、これで終わりだ。おかしな予感のようなものがあったのかもしれない。そそくさと彼女を置いて、私は、先に行くよ、という素振りでバイクに跨った。


走りだしても私は振り返らなかった。あの子が私のことを視線で追っているのかもしれないから、意地でも視線を合わせたくないと思ったのだ。

しかし、それは愚かな考えだった。あの子は来るかもしれない、と考えたことは誤りだった。

その橋を渡ってしばらく走ったところに空き地があって、日陰にベンチがあった。後を追ってきた彼女が気づくようにと思いバイクを道の脇の目立つところに止めて、ベンチに横になった。あの子は私を追ってくる、必ず来る、そう考えたからだ。

あの橋を渡ったこと。
あれは、私たちが別の世界へと本当に別れてゆくためのゲートを意味していたのかもしれない。

しばらく私は眠ってしまっていた。
陽光が傾き、そこには彼女の姿はない。後を追ってきた足跡もなかった。

つづく

| 2006-07-13 20:56 | 鳥のひろちゃん


あの夏、のこと ─ バッキャロー 

ウエストバックを枕にすっかり寝入ってしまったようだ。道路脇の公園に設けられた木陰にベンチを見つけて横になったのは3時ころだったはずなのに、陽光は傾き私の顔には西日が差し込んでくる。
燃えるというより焼けるというのがふさわしい。紫外線が針のようにチクチクと頬を刺しているのを感じて私は目が覚めた。

もしも…。
あの子が私を追って来てくれたなら、すぐに目に付くところにバイクが止めてあれば気づいてくれるだろう。膨れっ面をして「ひでぇ奴だなあ」と乱暴な言葉使いで私の前に現れる…。
そんな気がして走り急ぐこともせずに、私はベンチで昼寝を選んだのだった。

黄色いカンナの花が咲いていた。それを眺めながら、ぼんやりとしている。寝ぼけたままで、ひとりで居ることの意味の重大さに私は段段と気付き始めている。
30℃を越えるような真夏日だから夕方になっても地面が冷めない。公園を吹き抜ける風は生温い。

視界にあるカンナの花が、まるでTシャツの絵柄のように目の中に焼きつく。あの子は黄色いカンナの花のTシャツを着ていたのか。そんな思い違いを自分で訂正してブツブツと独り言を呟く。
「ほんとうに、来ないのかなー。何処に行ったんだよぉー」


そう。彼女はそこには来ないのだ。

幾ら待っても来ないことを私は知らなかった。そのころ彼女は、開通したばかりの高速道路に乗っかって東京方面へと走っていたのだ。
「バッキャロー!ひでぇ男!サイテーの男だな。オマエ」

つづく

| 2006-08-05 06:00 | 鳥のひろちゃん


あの夏、のこと ─ 愛に終わりがあるならば 

前略、ひろちゃん。

あのとき、キミはぷんと怒ってしまって、もう私の前には来てくれなかったのでした。

私たち二人が交わす言葉の中に別れという2つの文字はなかったはずだし、この世に生まれてキミと出会ってその運命の強さに神様の導きのような幸運と幸福を感じ続けていた私たちだったのに、別れという現実に向かい合っている今、やけに冷静になっている。
二人で走った道に行き止まりはない、と信じてきたし、ときには走るのをやめたり、ときには逆戻りもしてきた。認め合ってきた、そのはずだったのに、別れのときがきたのでしょうか。

キミの傍にいつもいたい。いつもキミを抱いていたいと願っていたのに、あの小さな肩も、猫のような丸い背中も、そしていつもボサボサの髪の毛も、もう抱きしめることができないんだ。思い出を夢の中に投げ入れてしまわねばならない、のだ。

でもね。愛に終わりなんかないよ。必ずキミを迎えに行くから。
夢から覚めて、そのとき、二人で手を繋いでお花畑を散歩しよう。
それまで待っていて欲しいんだ。
愛に終わりがあるならば、ゆうべの夢に葬ろう。

つづく

| 2006-08-06 06:57 | 鳥のひろちゃん


あの夏、のこと ─ 北へ 

【銀マド:鳥のひろちゃん】を書きながら、夏が過ぎてゆきます。

あれから幾つもの歳月が過ぎ、砂の器が風化するように、私の記憶も崩れてゆく。

「鳥のひろちゃん」を書き始めたころは、ほんの軽い気持ちでした。
あのとき、私が居たひとつの風景と心を書き留めておきたいと思ったのです。
今読み返して、ダブっているところもありますが、少しずつ私の心が風化して行っているのも、しっかり読めばわかります。

それは、新鮮さを失うことでしょうか。
新しい細胞が、また生まれ始めて、古いものが消えてゆくのだから、失うのではなく始まるのでしょうか。

もう少し、旅の続きを書きます。

----

彼女がいないという現実を認めていましたが、彼女が東京へと向かって走っているとはこれっぽちも考えませんでした。

山ひとつ隔てた何処かの町で今ごろ宿屋を見つけて風呂にでも入っているか、要領よくキャンプ場を見つけ出してテントを張って星を見上げているだろう。そんなふうに想像していました。そして明日にでもひょっこりと目の前に現れるのではないかと私は思っていました。

ファミレスで夕食を取ったあと、私はひとりでさらに北へと走りました。通過する町では花火大会があって、国道の向こうには大輪が上がっている。花火に向かって私は走りました。

あの子はこの花火を何処かで見ているんだろうか。…と、ふと、思ったときに、彼女のケータイを知らないことに気づきました。そう、今まで電話などする必要もなかったのです。

でも、どうして彼女のほうからケータイの番号を教えてくれなかったのだろう。心の何処かに何かの予感があったのだろうか。

夜の国道をいつまでも北へと私は走り続けました。

つづく

| 2006-08-07 07:25 | 鳥のひろちゃん


おしまいは、まだです

私は
夜の国道をひたすら走った。

あくる日も
その人を忘れようと
走りつづけた。

そんな思いを胸に、走ったり駆けたりしたことのある人なら、わかるだろう。

走れば走るほど、自分の思いをコントロールできなくなってくる。


ひろちゃんの話は、ここでおしまいじゃあなかった。

【続く】

| 2006-08-30 20:48 | 鳥のひろちゃん

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