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2009年3月 4日 (水曜日)

春の鼓動〔2003年3月中旬号〕

大阪に住む10歳ほど歳上のかたからメールをいただいた。「東大寺のお水取りが終わると本格的な春です」と書いておられる、ここにも春を待つ人がひとりいる。前の職場での知り合いで、まったく違った部署でありながらバイクが好きな同士で仲良くして戴いており、ひと足早い定年を迎え新しい人生を始めてからも何度か便りが届く。春を待つ今度の便りには、380キロと重たかったハーレーを手放してBMWに替えたと書いてあり、2月の中旬には月ケ瀬梅林に初ツーリングに行ってきたらしい。

バイク乗りは冬の間、寒さを我慢しなければならないので乗らないという人が多い。暖かくなってくると身体も柔軟になり、走れる時間が長くなる。路面状態にも気を使わなくても済む季節なので早く表に出たくてしかたがない。時間を刻む早さに変化は無いのに、冬を待ち遠しがっていた自分を沁々と感じる。童謡のミヨちゃんのようだ。

こんな思いを胸に奈良の都を散策するのは格別である。東大寺の勇壮な姿に感動し、さらに裏に回って二月堂にのぼる坂道をゆくのが大好きだ。馬酔木の花が咲いている。白く房になって垂れ下がるのを見ていると、花に鮮やかさや美しさはないもののこの季節の乾き切ったような野山に季節感と和らぎを与えてくれる。毒のある木には思えない。土壁沿いに小川が流れ、石畳の坂道には清水が滲んでいる。枯れ木のように見えるこげ茶色の低木にも小さな新芽が顔を出している。

京都の秋の夕暮れはコートなしでは寒いくらいで…と語り歌ったフォークソングがあった。重いコート脱いで出かけませんか…と歌ったグループもあった。長く辛い冬の始まりは、苦渋をじっと堪えて文化を受け継いできた京都という古都を舞台に、鮮やかな紅葉の下を舞い散る落ち葉の侘びの如く迎えた。春の始まりには若草山を仰いで、大空を見上げて背伸びをしてみたい。

霞の中でぼんやりと存在感を控えめにしている生駒の山々とは対照的に、二月堂の庭は静寂の中に胎動を感じさせる。僧侶は、燃え散った松明の欠片が散らばっているのを竹箒で掃き、砂利の参道に水をまく。境内を行き交う人々は皆、手を合わせ二月堂に深深と祈って去ってゆく。ここから、すぐ前にそびえる東大寺の甍を見やり、荒波を越えてきた天平の僧たちのことに思いを馳せてみる。

春という季節には「鼓動」という響きがまことにふさわしい。

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