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2009年3月11日 (水曜日)

夜空を見上げて考える 〔2003年12月上旬号〕

夜空を見上げて考える 〔2003年12月上旬号〕

仕事を終えて建物の前の駐車場に向かうと空一面に星が出ている。私でも名前を知っているオリオン座が東の低空に見える。その形がはっきりとわかるので凄く嬉しくなる。人間が意図してデザインをしたわけではないのにこのように綺麗に並んでいるのを、太古の人類が発見したとき、それは発見ではなく偶然であったはずだが、そして今で言う科学の概念などないからこそ、そこにひとつの信仰のようなものとして定着したり、希望や願いをする際の祈りの対象となっていったのだろう。科学技術は果たして私たちに幸せをもたらしてくれたのであろうか。現代科学を考えると必ず私はそこに行き着いてしまう。

電話機で写真を撮影して送ったり、歩きながらでも電話を掛けられたりできること。200キロものスピードの出る車があること。非常に優れた音質でしかもマイルームで映像付きの音楽を聴けること。挙げれば数限りなく思い浮かぶ。しかも、そのことはほとんどが現代では当然のことで、低コストで提供されている。疑問はここから始まる。

人の命を救うために細菌や細胞を研究して癌をやっつけるとか、心理学や精神科学などとも融合させて人間というもの神秘を探る、というようなことに、歴史的な科学が挑んできた。だが、電車の座席に座ったままで電話を掛けたときに、もしかしたら相手がトイレの中にいるかもしれないのに、それでも平気で掛けてしまう可能性を認めてゆくのは正しい選択なのだろうか。確かに、暗い夜道を子供が帰ってくる時に電話がなくて連絡が取れないことは困ったことだろうけど。
科学技術を推進する人にとってみれば、開発することは人間の欲望であり未知なるものの解決は誇らしいことであるだろう。そしてシーズの活用分野を考えることも決して間違いではない。つまり、私たちがもう少し便利になるために新技術を利用してゆくことの「進化の流れ」に誤りはない。

進化する情報科学やデジタル技術を駆使して生活を向上し便利な社会を築きあげことに反対するつもりはない。しかし、人々が、電車の中から電話を掛けなくてはならない必然性を生んでいる社会構造に疑問を持ち、暗い夜道を危険にしてしまったこと(または暗い夜道に歩かねばならない必然性)を見直さねばならないのではないだろうか。

このようなことを考えながら、夜空を見上げる。寒さを何ひとつ感じることなく、マイカーでドアからドアまで帰ることができる便利さの恩恵を受けながら、この車の中から家に電話を掛けて「もうすぐ家に着くから」と言えることよりも、「お父さんがもうそろそろ帰ってくるよね、ご飯の支度をXXちゃんも手伝ってね」という会話の中で母と子が父を敬うようになるのではないか。このままでは、心待ちにする本当の姿が薄れてゆくのかもしれないと思う。

快適さを生産するのがテクノロジーを開発するエンジニアたちであるのだが、彼らを戦士と称えるメディア番組に人気があることなどを考えれば、矛盾も多くため息も出る。

自然環境が破壊され、人間としての野生の感覚も失い、生きていることの感謝を忘れ去り、暗いくて静かな夜も失ったことが重大なことだとは思わないのは、高度情報化社会の裏で、やはり、どこかで何かを勘違いしているとしか思えない。

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