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2009年3月11日 (水曜日)

花屋 〔2002年11月号外〕

花屋 〔2002年11月号外〕

▼ 多忙だと嘆くと必ずといっていいほど誰かからそれは「心が亡びる」のを意味するのだというひとことを戴く。そのとき、私は、「だったら、いっそうのこと心が滅びてしまえばいいではないか」と応じてみたくなる。▼古代から、殷、周、秦、漢…と国を滅ぼしては甦ることを繰り返してきた中国大陸の国家は、決してその民族に血が消えてなくなったわけではない。だから、といえるものでもないが、私の心も、消えてしまわないならば、一度亡びてしまったほうがいいのかもしれない。▼師走である。別にこれといって忙しいわけでもないのに「忙しい」と口癖のように言ってしまう。翻訳勉強会の課題提出期限は守れずおよそ一週間ほど延ばしたままでいる。挑戦したいトライアルにも手をつけていない。読みかけの本は鞄に入れたままで、枕元に置いた本は1ページほど読むと眠ってしまっている。大掃除も始まらない。ファンヒータもまだ出していない。窓拭き、洗車、障子張り、お風呂の掃除…などなど忙しい気持ちにさせるネタは山積である。 ▼かといって、実はそれほど忙しくないのではないだろうか、とふと思った。まだまだ亡びるほどでもなかろう。もしも何もしなかったとしても、新年はやってくるし、3月になれば再び失業者となるのは紛れもない事実だ。しかし今更、何を着飾っても人間の本性や本質を変えられるものでもないし、偽善を装って人に媚びへつらうのも嫌だ。▼同じころに引退をした田中元外務大臣や辻本代議士にしても、言うなれば同じように失業者なのだろうが、きっと必ず甦ってくる人だ。一体、あの人たちと私とでは何が違うのか。▼さて、師走の賑わいもこれからが本番だ。ツリーをきれいに飾った店先を通りかかると、今、そういうものに癒される余裕もないのか、それとも冷めてしまっているのか、などと思う。店先にポインセチアやシクラメンを所狭しと並べているのを見かけた。京都の会社を辞めるときにある女性のかたが、「田舎に帰って、いつか、花屋をしたいなあ、って言うたはったよね。叶うとええね。」と言ってくださったのを思い出した。ほんとうに私は「忙しい」のだろうか。

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