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2009年3月11日 (水曜日)

クビになった人 〔2002年10月中旬号〕

クビになった人 〔2002年10月中旬号〕

▼先日、中日新聞の勧誘員の人が家に来た。私は35年以上朝日新聞を購読しているので、他紙を購読するつもりはまったくなく、勧誘者にもそのことが知れ渡っているはずである。言ってみれば私の家に勧誘に来た人は、そういうことを知らない素人の勧誘員だった。その男性と一点だけ話が合った。▼彼も少し前に仕事をクビになって先日までは失業者で、新しい仕事も選り好めるほどなく、今の仕事をしているのだと言う。「職安のカウンター越しに仕事を斡旋する役所の人は、失業者の気持ちなどを、スズメの涙ほども(理解したり)感じていないでしょうね。そこが腹の立つところですよ。」と言いながら同情を求める。なるほどなー、と思い、我が家としても彼に本音を語れる唯一のところだったが、そのことを言葉に出すと流されそうなので、心で感じながら、申し訳ないが断った。ただ、彼の仕事ぶりや話しぶりを見て、身につまされるものがあった。おそらくこれまでも辛い仕事をしているのだろう。我が家に来たくらいだから(勧誘などの経験も無く)本当に(失業者あがりの)素人なんだろう。▼「私も3月末で松下電器産業(株)をクビになりました。ひどい会社でした。世間には温情の厚い、クビと言う言葉など会社の辞書には無いような人に優しい会社と思われていますが、実際は人間を道具としか思わない、腐った泥のような部分があって、自由競争に勝つためには人を踏み潰してでも経営を重視するような会社です。松下幸之助の綺麗で美しいところを上手に悪用して、幸之助の悪いところばかりをいつまでも引きずっている旧体制の会社だったです。私はクビになる前に会社の中の泥をどっさりと浴びされ、怒りを通り越して、諦めの気持ちで辞めたんですよ・・・」とは、打ち明けなかった。▼今、新聞などの失業者や雇用、不況をテーマにした記事を見ても、失業者本人の声が聞こえてこない。経営状況の厳しい会社社長の叫びや大企業の経営陣の経済政策批判は騒がしく耳に届く。しかし、もっと底辺で本当に苦しんでいる人の声は、ほとんど届かない。職安(ハローワーク)で実際にささやかれている声は、どこに消えているのだろうか。▼しかし、考えようによっては、ハローワークで百人に聞き込みをしたルポや実際に失業した人のルポを掲載しても、面白くもないし、記事に活気が出るわけでもない。失業者が読みお互いを哀れむだけであろう。不況対策にしてもその政策にしても、失業する可能性が絶対にない人が失業者救済のための策を考えているのだから、ある意味では笑い話のようだ。こういうようにぼやいたり嘆いたりすれば、相乗的に失業者のひがみとして広がるばかりだ。▼私の場合、4月から9月まで失業給付をもらうための手続きや仕事を探すための検索システムのために職安に足を運んだ。そこで、職の無い人々が真っ先に交わす挨拶は何か。それは、「失業者は国民の代表の犠牲者なのである」と思っているかのように振舞うカウンター越しの役所の人々の対応や態度、そぶり、暇さ加減などへの批判である。さらに政策の無策を諦める声。▼「(カウンターの)向こうで働く人は失業など、どこ吹く風や」「ええなあ、座ってて給料がもらえるのか」と言う声には、「妬み」のようなものは少しもない。(当然のことだが)失業者に何の人格的な欠陥があるわけではないのだし、能力が欠けているわけでもない。どこで何が間違って、階層を隔てたような扱いを受けながら仕事を探さねばならないのか、と何割かは感じている。社会の失業者、つまり仕事を突然に失った人、または失わざるを得なかった人の本心は、何であろうか。前兆もなく論理もなくスピンアウトさせられた人の本心は様々で、毎日雑談をしていても掴めない。掴めるほど誰の意見も安定していない。こういう揺れた気持ちを新聞や雑誌は記事にしない。どうしてだろうか。▼だったら私が試しに、職安で顔を突き合わせて世間話をしている内容を、インタビュー記事にしてHPに載せてみようか・・・と思った。しかし、それは良く考えると無駄なことである。職を失った人の声など、誰も聞きたいと期待していない。失業者は代表的犠牲者であると考えられているから、そんな人の声など市民はまったく聞きたくないのだ、ということが冷静に考えればわかってくる。▼貴重な体験ができた。失業者という滅多に経験のできない体験だ。不況がいつまでたっても回復しないのは、「私が味わったような失業体験を机上でしか理解していない人が多いからである」と明確に感じている。国会解散や内閣総辞職などという建て前のアクションは不要だ。すべての国民を一斉にクビにして、一から出直せば必ず景気は回復する。そう私は思う。

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