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2008年11月19日 (水曜日)

初霜や八朔ひとつ供えたろ

マイナス5.5℃の寒気団が1200メートルの上空に辿り着いた。今年、最初の寒い朝だ。8時過ぎに不燃物ゴミを置きに近所の角まで突っ掛けで走っていくが、足の指先が冷たかった。靴下を履かねばならない季節になったなと沁み沁み感じる。

そのことが反対に嬉しいようにも思えてウキウキもする。寒くて冷たいのは嫌いなくせに、ガラス越しに温い陽射しを浴びながらソファーに掛けて本を読んだり手紙を書いたりする、そんな冬が好きなのである。


冬を迎える前に済ませておかねばならないことが幾つかある。山から切り出した薪を風呂焚き用に割ることや、北風を除けるための藁囲いを家の周りに組み上げるのを手伝うのは子どもの仕事だった。

現代ではそんな風景はどこにも残っていないが、霜が降りる季節になると心を引き締めて覚悟を決めるように人々は「冬支度」に取りかかった。


縁側で母とふたりの障子貼り ねこ

障子貼りも冬支度のひとつであった。縁側には優しい光が降り注いでいた。庭の花畑は枯れた色に変わっていたが、父の育てている菊は元気に咲いていた。そして蜜柑の木には橙色の---だいだい色という言葉の響きも懐かしい---実が幾つもなっていた。もぎ取って食べても酸っぱいだけで一度も家の蜜柑など美味しいと思ったことなどなく、店で売っている万遍なく綺麗な蜜柑のほうが甘くて好きだと言っては父や母を残念がらせたものだ。

思い出は脆いもので、この蜜柑の木ももう誰も食べる人が居なくなったから役目が終わりだということで父が切り倒そうとしていたころに実をひとつもぎ取って食べたら、栽培物の味とは全く違った酸っぱさがこの上なく美味かったのを思い出す。

父が逝って十年以上が経つが、時代は変遷して、今そこに父が植えていった八朔(はっさく)の木があり、背丈の倍以上にもなって鈴なりの実をつけている。

初霜や八朔ひとつ供えたろ ねこ

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遺す言葉を続けよう。 * ▼怨む、憎む そのようなことはなかったと思う。そもそもそんなことをしても勝ち目がなかったので、はなからからそんなモノに刃向かうような真似はしない。 腹を立てたり失意に苛まれないで生きるためには、自分のやり方を思案してゆくしかなく、そこで哲学的な思考回路が育ったのだろう。たまに理屈も 言ったが、表に出ていってまで強く主張することはなく、内に秘めていることが多かったかもしれない。 さまざまなケースを考えても、やはり片方の耳は大人になるときには聞こえなくなっていたし、もう片方の難... [続きを読む]

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