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2008年10月22日 (水曜日)

宮部みゆき 理由 と 火車


宮部みゆき 理由

「火車」を書いたので、勢いで「理由」も書いてみようと思ったけど。
あんまし、細かいところまでは思い出せない。

状況や心理を割と細かく、かといって、高村薫のようではなく、サラリと書いています。そういうところを読んで、ドキュメントタッチで、などという人がいるのかもしれない。

こういう作品を読むと、直木賞はいいなあ、と思う。
(逆の作品もあるのも事実だが)

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理由 (新潮文庫)
宮部 みゆき
新潮社
\900

直木賞だからということで「火車」と「理由」を候補に早くからあげていた。しかし、宮部さんの穏やかで優しそうなプロフィール写真をみると、どうも推理小説作家としての強引さがこちらまで届かず、ついつい後回しにしていた。

しかし、なかなか。

読み始めると、あらら松本清張を30年ほど前に読み始めたときに感じたもの、それは身体の震えのようなもの、を感じて、この人は単なる物語を作る書き手ではなく、細かい表現手法や構成までも十分に吟味をしているぞ、と私なりに嬉しくなったのです。

話の筋が追えればそれで結構という作家ならば、極端なことを言えば、映画のプロモーション映像を見るように小説の解説を読めばいい。でも、作品そのものを愉しめるようなものを書いている人の場合は、一字一句をしっかりと読んで行くこと自体が快感なのだ。

読みながら、清張さんの再来だ!とブツブツ言ってしまったのを思い出す。一冊の文庫本がそう思えると、引き締まった感触を与えてくれ、どっしりと重く、一枚一枚が磨かれた高級紙に印刷されているようにも思えてくる。

物権の話なのでまずまず身近な話題である。殺人は決して身近ではないけども、よもや自分に降りかかることが無いとも言い切れない。宮部みゆきは、「火車」やこの「理由」で扱うテーマの非現実的な部分を、首筋を擽るように現実めいてドラマにして、上手に読者を引き入れてくれる。

法律の話は(工学部の私には)難しいこともあるけれど、彼女が自分の年齢で知り得ている以上に、これも上手に人の心を描いているから不思議だ。やはり、人物の目に見えないものを読者に伝えるのは天性の才能でしょう。「火車」と並べたら、出版順に読んだほうがいいかもしれない。
--
| 2008-10-22 14:34 | 読書系セレクション |


宮部みゆき 火車

虚像。

ネットワークシステムやデバイスの技術革新により社会の構造そのものが大きく変化している。人々はいとも簡単に大容量の情報を、あたかも自由な感触で操作できる。その裏には「あたかも」と書いたように「嘘」かもしれないことが数多く潜む。

虚像という言葉から連想されるものが段々と現実化されているともいえる。

誰もがストレス社会の中に晒され、人が安易に楽で快適な方へと流されていってしまうことや、麻薬中毒のようになるまで快楽、快適の中を連れ回されているのを、第三者としては咎めることはできない。そこには最もな理由もあるし、その乱れた姿は実はやがて常識化されてしまう正当な姿なのかもしれないから。しかし、真っ当な哲学と倫理観を持ち合わせていれば、必ずどこかで立ち止まるとも思う。いい加減なところで振り返る。そして自分が見ているモノが虚像だと分かるはずだ。


ブログやHPが身近にありケータイから簡単に扱え、自由に出入りできる時代だ。ある種の自分の理想像をブログなどに築き上げることもできる。バーチャルな夢の自分をそこに作れる。強くなりたい、格好よく振る舞い、お金持ちになりたい。そんな願望を叶えてくれるような錯覚に酔わせてくれるのがネット社会の一面でもある。

この一面を、正確かつ冷静に把握していなければ、ネット社会では大きな錯誤が発生する。もちろん起こらないことも有り得るわけだが、あらゆる事象がデジタル的に二者択一のデシジョンテーブルの上で判別されて、事件が起こることもあれば、平和が継続することもある。

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火車(新潮文庫)
宮部みゆき
新潮社
\900

火車という作品はこのようなネット社会が広がる以前に書かれた話で、人々の心の中に願望としてあった虚像がまだまだ夢の段階であったころの作品だ。虚像の中で腐ってゆく人の心の果てを予測していたともいえるが、小説とは現実と非現実との境目にほんの少しだけ踏み込んで読み耽る妄想を愉しみながら伴走してくれるようなものだとすると、火車という作品は読者を捉える駆引きを非常に心得ていると思う。

ストーリーのバランス感覚が吟味されて、一部分が特別に拘って長くなっていたり、何処かが分かりにくかったりするようなこともない。これは作者が天性の才能とセンスとして持ち合わせているからかもしれない。

二人の女性が登場するがそれは実像としてではない。人物の実態よりもその背後に潜んだものを手繰り寄せることでサスペンスとしての面白さを出す。一方、現実社会の事実や判例としてのできごとを、私たちの決して他人事ではない裏の日常として、読ませてくれる。有り得ない話でありながら有ってもおかしくないかもしれない話ともいえる。有って欲しいような期待に似たものもある。

そこで虚像という言葉を私は思い浮かべたのだ。

いい子で居たい。自分の弱いところや醜いところは隠しておきたい。そういう願いが人の心の中にはある。どれほど昔からあるのか不明だが、人はそういう願いを追いながら永遠の幸せを掴もうとしている。もしかしたら五千年前のエジプト人や中国大陸の民族にもあったかもしれない。

幸せになりたい、豊かに暮らしたいという夢を描くことで、ひとつずつステップを踏み、実像と虚像という二つの姿を睨みながら現実の幸せを追っていた。

姿の見えない主人公は果たして幸せを掴めるのか。たとえ一瞬であっても「ああ幸せだ」と思うことがあったか。そして未来に有るのか。複雑な余韻を投げかけてくれる。

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しかし、虚…という言葉が心に引っかかる。人間として目に見えぬものは信じられないし、地に足が着かないものは不安なのだ。そんな潜在心理が働くので、虚像、虚空、仮想という概念には心を許せないものがあるのだ。

複素数という概念では虚数という言葉がある。複素平面という我々が日常では出会うことのない座標軸の上では、ほんの少し時間や位相をずらしてやることで無限大に数理空間が広がってゆく。

実は私たちはそういう自在空間の中で生きているのではないかと思うと、時間軸の歪みに押しつぶされそうな苦痛が襲いかかってくる反面、孤独にそっと生きていれば永遠の幸せを手中にできそうな気もする。そう、誰の目にも触れずネット社会の中で慎ましやかに引き篭もり人生のようなものを送る…みたいな。だから、運命のサイコロをもう一度振り直すって、もしかしたら、容易いことなのかもしれない。そう思える人がいてもおかしくない。

火車という題名は「逃亡者」でもなければ「失踪」とか「偽りの姿」というようなものでもない。私たちが毎日、紙一重で背中合わせになっている一瞬のようなもの、それは負債による地獄だけではなく、人間と人間で責め立てあいながら孤独と闘わねばならない人たちが、実像と虚像、そして更なるもうひとつの虚像とを擦り合わせながら暮らしている状況と似ているよう気もしてくる。
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| 2008-10-22 10:34 | 読書系セレクション |

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