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2008年2月14日 (木曜日)

父の匂い

久々に塵埃秘帖を書こうと思う。

▼日々の暮らしに余裕があり過ぎても足りなさ過ぎても、いけない。人の心とは、何とも低能力であると思う。二本足で歩き、文字や言葉を使い、道具を考案して空も飛べる一方で、大自然の中で逞しく生きている動物たちと比べると、儚い。そんな些細な才能を誇れるだけで地球上で一番大きな顔をしている。地球まで滅ぼしてしまうかもしれない愚かな動物なのに、インフルエンザに怯え、心を病み、成り金でいい車に乗って走りまわり、実に滑稽だ。

▼京都での寝床は娘のベットだった。イタリア帰りで部屋が片付かず、布団が1枚しか敷けず、ベッドに私が入り母と娘が1枚の布団で寝ることになった。2晩ぐっすりと眠って
「やっぱりこの布団は娘の匂いがするな、何年経っても嗅げばわかるわ」
と私が言うと、娘は自分の布団を取り返すために2日振りに自分お布団に潜りこみ
「お父さんの匂いが着いたんと違うかな」
と言う。
(匂ぎながら)「やっぱり匂いがするわ」

柔らかい自分の布団で、自分の匂いに私の匂いが混じっているにもかかわらず、うっとりしている。

---

▼父の匂い。私にはそんな記憶は無い。18歳で家を出て下宿暮らしを始めたので、父やオフクロの布団に潜り込むなどということは、子供の頃でもない限りやった試しも無く、従って記憶は無い。

▼うちの娘は、大人なのか子供なのか、私の布団に気やすく潜り込み、追い出さなければ朝まででも寝ているような子で、受験のころにも寒い夜などにはたびたび私のところに遊びに来たものだ。寂しいのか部屋に戻るのが億劫だったのか、そのあたりはわからない。

▼世間一般では、父の布団はクサくて汚いというのが通説だ。にもかかわらず、我が家の娘はクサイかもしれない布団にたびたび遊びに来た。だから、私が占拠しても、許してくれるのだろう。

▼私が、その記憶にも無いほど昔に、父の布団に潜り込んでいたとき、父の布団はどんな匂いを放っていたのだろうか…とふと思った。

どうしても思い出したい。しかし、思い出せない。

▼父の布団は、確かにクサかったはずだ。農作業で汗にまみれ、夜なべで疲れて、休まる場所はあの布団だった筈だから。そう思うと、意地でも思い出したくなってくる。

▼匂いというもの。記憶に無いものを思い出そうとすると、私の思考は段々とかすれてきて、夢の中を彷徨うような不思議な気分に襲われ始める。そう、母の胎内でプカプカと浮いていたときのようだ。

▼小雪が舞う大寒の頃に父が死んで10年が過ぎた。匂いは、今となっては確認できない。

我が家の娘は、私が死んでから10年後に、この布団の匂いを思い出してくれるだろうか。

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