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2006年4月22日 (土曜日)

第7話【花も嵐も】 ひっそり・大沢温泉<花巻>

「ほっと・ゆだ」駅で温泉に入った私は駅前のタクシーの運転手さんに話しかけた。ソロツーリングでは人に話し掛けるというのが楽しみのひとつで、情報獲得の手段でもあります。

旅の役立つ情報は旅先で獲得するのが1番いい。10年ほど前まではインターネットなどの情報源もなく、パソコン通信で談話をする程度だったので、やはりとにかく現地に行ってみるというスタンスは行動力の象徴だった。
「大沢温泉がいいよ」と運転手さんが教えてくださったのでそちらに向かうことにした。昔ながらの湯治温泉で一軒宿である。宿泊をするかどうかで迷ったが、いわゆる番頭さんらしき旦那さんもバイクに乗るという片言の会話で安心感が出たこともあり、2000円払って泊まる手続きをした。

旅館の廊下を歩きながら、ここが有名な「大沢温泉自炊部」であるのか、と思うと、あとになってから満ち潮のように感激がこみ上げた。不安と好奇心が入り交じっているころで、今では滅多に味わうことのない不安と動揺だった。時代を2、30年遡るような建物の中で湯治客が行き来するのを見ていると、長い湯治の文化を感じる。ぽつんとある売店。活気が出たり急に静かになったりしている。

周囲がガラガラと開け閉めする戸で囲まれた8畳ほどの大部屋で蚊取り線香に火をつけて寝ころんでみた。台所に行けば10円を払ってガスコンロに火をつけ湯を沸かす。湯治客のおばあさんたちと会話も弾んだ。おすそ分けも戴いた。

そうそう、タイトルに書いた「ひっそり」の意味を説明しなくてはならない。それは、温泉場がひっそりと佇んでいるという意味もあるが、お客さんに若い女性がけっこう混じっていて、暗闇の中で無言で服を脱ぎ「ひっそり」と湯に浸かっているのである。せせらぎが人の気配の雑音を消してくれる。

人がざわついた雰囲気がなく、遠くでほのかに灯された明かりがお湯まで届いてくる。自然の姿が持っている夜空のほんとうの明るさを、湯舟の中から見上げ、人が生まれたときのように男女の隔たりなく湯に浸かる。

無言が続く。だから「ひっそり」である。

大沢温泉にて

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