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2003年2月15日 (土曜日)

ホンモノ <2月中旬号>

ホンモノ 

▼1月末、アルバイトの給料を受け取りながら、月日の流れるのは早いものだなと感じていた。知人の紹介で10月から6ヶ月の契約で仕事に出ていたが、それがもはや半分を過ぎていたことを給料袋を手に実感したのであった。昨今現金で支給をするのは珍しい。これに限らず職場を変わって珍しいことの連続だった。

環境や雇用条件、形態が変化すると驚くことや学ぶことが多い。いかに自分が狭い世界でささやかなことに満足をして生きてきたのかということを改めて知った。

このような変化を違和感と感じてついつい言葉にしてしまう。すると硬い殻としてこの体制を守ろうとする人に必ずぶつかる。プライドと同じように大事にし、棄て去ることを嫌う人々である。

否応なく失業した私がこの殻にぶち当たるのは致し方なかったにしても、率先して自らの力でこの殻を打ち破って活躍しようとした人々にも体制は決して暖かくはない。社会の底辺の高さまで意識や視線を落として気がついたことであった。そこには確実に哲理が欠如しており、社会は倫理を失いつつある。

▼3月中旬で仕事がなくなるので、あたふたとしていたら塵埃秘帖を書くのを御座成りにしてしまった。それは悪いことでもないと思うが、余裕を持てずに日々を送ることは私にとってマイナスであった。冷静にならねばならないと言い聞かせても困難であるのが常である。こういうときこそ本領を問われるのだろう。本領とはいつどんなときにでも冷静な判断ができることである。

▼さて、冷静に「ホンモノ」を見る眼というものが私にはどこまであるのか。自信が湧くときがあれば失意に落ちることもある。しかし、ホンモノを見る眼を育てるよう心掛けているしかない。ホンモノに出会う機会を少しでも多く持ち、センスを磨く。音楽にしても美術にしても学問にしても、遊びにしても例外でなく、すべてにそれが言えよう。

娘が高校受験生で、将来に何になりたいかとか夢は何かと、誰彼となく聞かれるらしい。15,6歳の子どもに自分の未来の何がわかろうか。天文学を学びたいなどと夢を語っていた。そこで私は、周囲に影響されて塾に行ってみるとか、目的が曖昧なまま遊んだりするのはやめるべきだ、夢を叶えるためにはその夢が何物なのかを研究するべきだ、と私は言っている。

まず、目標を考えて戦略を立てること。これを必ず自分の頭で考えること。そしてもっとも大事なのは、失敗を恐れず、くじけず、目標を見据えて、自分の戦略に自信を持ってゆくこと。戦略のよしあしが八割だと言っても過言ではないだろう。

相当に難関な大学に進学するには普通に勉強していたのでは無理だというのが進学校で教師をしている知人たちの通説である。しかし私はそれを否定せずとも従わないつもりだ。通説を優先することよりも、試験の成績が悪くても何故悪いのかを自分で考え、対策も作戦も自分で考え、再挑戦してゆくこと。悪い成績を持って学習塾や家庭教師に飛びついたら(プロに任せてしまったら)きっと成績は上がるのだろうけど、今しかないのだから、ちょっと冒険して自分なりの工夫をしてみてはどうだろうか。それで駄目でも工夫をした内容がすばらしければ必ず明日につながるのだ。私はそう言っている。

確かに才を身につけ、術を知ることは重要だ。しかし、社会に出てからは塾などないのだから、自分で考えねばならない。だから親父は横であれこれと入れ知恵をするのが仕事だ、というと、仕事がない(プーや)からな、と反撃された。晩酌が少しずつ深まるにつれて、わけのわからないことを言い出す私は、立派な反面教師なのかもしれない。

▼酒飲みのぐうたら話は続く。次第に娘は馬耳東風を装ってゆく。疲れずに話を聞く術なのだろう。

プロジェクトXという番組は、実は愚かな人の物語であって、これからに時代に本当に叶うような健全で人間的な意識の成長を助けるのを妨げているのでなかろうか、と疑問を持ったことがある。成功したら良い。しかし、ほとんどは失敗であろう。企業戦士を鼓舞する「失敗を恐れるな、失敗は成功の元だ」というような言葉が、都合良く違う意味で利用されて十数年、いや、二十数年かもしれない。戦士たちは高度成長の山頂に幸福を夢見て働いた。しかし、こんな時代だから、少しいい加減になり、立ち止まってもっと大局的に麓を見つめることができるようになってもいいのではないか。(麓だと思っていたのは実は只の野原だったってことはないか。)

NHKというメディアが、社会や人々に非常に文化的で暖かい冷静な視線を投じている、と思うことがあれば、プロジェクトXのように、ひとつの番組が右翼啓蒙的な映像に見えることがある。強き者、弱き人々の味方であるようで、第三者的でもあるのだ。だからNHKというところは不思議である。これが現代社会の表と裏を如実に表現しているのかもしれない。

▼娘よ、こんな技術の進歩や社会の流れにとらわれない生粋の学問を目指そうではないか。お父さんができなかったこと。哲学を科学するとか、心を(心理を)科学するとか。自然界に踏み出していってみるような仕事とか。面白いと思わん? 工学だけはやめてくれ!(これが本音であったか)

私の話がわかっているのか、テキトーに聞いていたのか、突然、「お父さんの部屋の宮本武蔵は全部あるんやなぁ、あれ読もうかなー」と言いだした。そこで私は、「高校時代は勉強などしないで、そんなものをどんどんと読んで頭を遊ばせておきなさい。ホンモノに出会うチャンスを掴むことが大事なんだよ。」

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